ソファーに縮こまってテレビを見ている私、なんか静かだなあと思えば今日もフィディオはサッカーの練習に行ったんだった、いつもはぴったりとくっついてくるから体も冷たいし心もカラッポな感覚に浸る、嫌いじゃないんだ、この感覚。


「マリナお使い、行ける?」


背後から綺麗で透き通った声が聞こえたから凝縮してしまったんだけどこれはフィディオのお母さん、じゃなくて私のお母さんだったんだ。あたたかい私の家族です。
どうやら今日はミートソースのパスタみたいでトマトが足りない、まだここの土地に慣れてない私への挑戦状かもしれない、お使いという名の。
私は頑張る!と出来るだけ引き締めた態度でお母さんに言ったと思うのだけれど何故かお母さんにふふっと笑われた、そんなに私の真面目な顔が面白かったのかなぁ。


***



簡単に書かれた地図とお花柄の手提げをぶら下げて、歩いて数分。


『……っ、』


迷ってしまった、ここにあるはずの近所の野菜屋さんは古ぼけたアパート、とても野菜なんて売ってるような所じゃなくって、時計を見ればもう5時半。晩ご飯の時間はおおよそ6時半頃だしフィディオだってもう練習が終わる時間だ。もう泣きそうです、イタリアの人達は優しいから聞けばいいんだけど残念ながら道を聞けるほどに私は伊語を話せない。野菜屋ってなんていうのだっけ……?


「チャオ、マリナ!」


聞き違いかもしれないけど確かに私を呼ぶ声がしたから振り返ればマルコくんがにこにことそこに立っていたから、思わず抱き付いてしまった。ごめんなさい。


「わ、何だか積極的だね!」

『あ、う…ごめんなさい、怖くて…』

「え?何で?」

『……野菜屋さんが、その、分かんなくて、』


マルコくんは頭に疑問符を浮かべたら、あぁ!と納得したように私の肩を掴めば眩しいくらいの笑顔


「迷子だね!」

『その通りです…』

「ははっ、可愛いなぁ」

『…………。』

「え、ありがとうとか言ってよ俺、恥ずかしいじゃん」
『あ、ごめんなさい!ああありがとう…?』


全然恥ずかしくなさそうなマルコくんは私の髪をよしよしとあやすように撫でる、……同じ歳なのに何だろうこの差。


「おんぶとだっこ、どっちがいい?」

『?』

「ほら、もう遅いしさ野菜屋行って家まで送ってあげる!」


だからどっちがいい?とまた眩しい笑顔のマルコは言う、まままさか、送る=担がれるってことですか、うわぁあああ!は恥ずかしいに決まってる。だけど背に腹は変えれないもう時計の針は時間をとっくに過ぎている。私がトマトを買って家に着かないかぎりミートソースなしのパスタなのだ、パスタオンリーなのだ、それは寂しすぎる。ミートソースあってこそのパスタでパスタあってこそのミートソース………って語ってる場合じゃなくて!


『だ、だ、っ』

「だだっ?」

『…っこでお願いします』


まさに穴があったら入りたい、そんな気持ちで言うとマルコはクスリと微笑み私を担ぎ上げる、びりびりと麻痺するような、甘い香りがした。







sentire
(感じる)









***
マセラッティ好きです

101208







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