日曜日の朝、午前10時。向かい合わせた席には女の子が居た、ああそうか。妹が出来たんだっけ、スクランブルエッグの香りがとても食欲を誘う。目が合うと昨日よりも瞬速に目を反らされる、まだ恥ずかしがってるみたいでふふふと笑うと顔を真っ赤しさせて呻いていた。母さんがいじめちゃだめよ、とまた言われたけれど決してそんなことはしてないのに。


「じゃあ行ってくるね、母さん」

『行ってきます…お母さん』


いってらっしゃい、頼むわねフィディオとマリナと俺の頬にキスをした。ドアを開けると涼しい風が吹いて天気は良好。淡いピンク色のワンピースにさらさらの髪の後ろ姿が目に映った、マリナと名前を呼ぶと振り返る。甘い、香り。


「おはようのキス、してないよね」

『へ?あ……う、』


軽くキスをして早く馴れてね、と言うとコクコクと素早く頷く。そんなに頷かなくても分かるのに。
取り合えずこの辺を歩きながら説明していく、イタリアの街はとても綺麗だ。水も、緑も、空も全てが目に見えるように作られている街並みは自分も好きだった。
海岸沿いを歩くと、さっきまで頷いてばっかの彼女が近くで見たいなと言ったから砂浜まで行く。

透き通った海、綺麗の尊重。マリナの目線は遠くを見ている、靴を脱いで海に足を運び、どんどんどんどん進んで行く。静かな波がワンピースの裾に浸かろうとするのに俺は走って海に飛び込んだ、マリナの手首を掴む。


『あ………』

「濡れちゃうよ」


まさか気付かなかったのだろうか、そんな訳ないに決まってる。彼女はさっきまで本能的に動いていたに違いない。不思議でたまらなかったけれどあえて聞かない、彼女についてはたくさん気になることがある、だけど俺だってもう子供じゃない。素直に聞いていいことといけないことの違いが。

気まずそうに俺を見て、目を反らす。何でそんなにマリナは俺から目を反らすのだろう。恥ずかしいとかもあると思うけれど今は違った、何か悲しそうな表情だったのを見たから。


「お腹好かない?」

『え?あ、う、うん』

「食べに行こうか、何が食べたい?」

『フィディオが美味しいと思うなら何でも』

「分かった、行こうか」


手首を掴んだまま海から足を引き抜くように海岸を後にする、彼女は何だか名残惜しそうに見えた。不思議。


『ごめんね、ありがとう』

「どういたしまして」


手首を握っている手を離してみたら、何だか寂しくてたまらなかった。








Oltre
(もっと先へ、それ以上)




***
切なくなっちゃった








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