いつも通りにサッカーをして、他愛の無い会話をし、帰りは笑って寄り道したり。そんな日々を毎日続けている、なのに飽きないのはサッカーが好きだから、サッカーが関わっているからで。だからこそ毎日を退屈だなんて思わないしむしろ楽しくって仕方がない。誰かが言ってた、何かに夢中になって努力することは世界で一番素敵だって。誰だかはもう覚えていないけれど。


「フィディオ!近所に新しいパスタ屋が出来たんだ、興味ないか?」


練習が終わり、タオルで汗を拭いながらマルコが言った。たくさん練習をしたのにまだ動こうとする気力があるのはパスタだからだろうか。


「ごめん、今日母さんに真っ直ぐ帰ってこいって言われてるんだ」

「残念、何か用事でもあるのか?」

「詳しいことはわかんないけど……」


ベッドから起きて、母さんからのおはよう、そしてキス。朝食のパンを頬張っていると思い出したように言ったのだ、今日は早く帰って来てね、とのただそれだけ。時間も無かったし詳しいことは聞いてないし、どこかに出掛けるのだろうかとは予測はしておく。
オルフェウスのチームメイトに別れを告げてサッカーボールを弾ませながら帰っていく、自分がボールを蹴ると上に、自由自在に自分の体の一部に出来てしまう。女の子達がチャオ!と声を掛けてくれる度にボールを動かしながら返事をするのはもう日課だ。黄色い声援は心地が良い。

家に着いて足元のサッカーボールを拾い、鍵を開けて入る。母さんはまだ帰って来てないみたいだ、早く帰って来たのにな。

汗をシャワーで流して水を一口、ソファーに寝転がる。机の上にあるサッカー雑誌をぺらり、ぺらり。5回程ページをめくると玄関のドアが開いた、母さんが帰ってきたのだろうとリビングのドアが開いた、おかえりと一言紡いだ後に女の子が1人、母さんの後ろにくっ付いていた。長くて艶やかな黒髪が綺麗で見とれる。
ぱちり、視線が合うと瞬間的に反らされた、初めてだ。だけど何故か懐かしいような気がする。


「今日からこの家の家族の一員になるのよ」


にっこりと母さんは微笑み、女の子の髪を撫でて、フィディオよ、仲良くしてあげてね?と言った。コクリと頷き顔を赤らめて視線を俺と合わせた、可愛い。この子の瞳は俺と同じ、青。ハーフだろうか。


『マリナです、よろしくおねがいします』


ガラスのような繊細なソプラノが耳に響き渡った。







Piacere
(はじめまして)









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