ばたばたばたばたばっ、ずこっ、廊下に響く足音で分かる。嫌な予感。
「Everything OK?」
(大丈夫?)
『Uh...ThanK you…』
(うぅ……ありがと…)
そしてまた鳴り響く大きな足音についてきてるような挨拶が聞こえて教室のドアがピシャリと開けば見慣れた女の子が息を切らして俺に歩み寄る。
『Mark!』
「It is what.」
(何の用だ)
『Let's speak in Japanese because it is troublesome.』
(面倒だから、日本語で話そうよ)
彼女がにっこりと笑えば、俺の口からは思わず溜め息が出た。まあ確かに彼女は英語が出来る日本人だが、丁寧に作っている英会話でも彼女が言うとそう聞こえてしまうのは重症だろう
『課題見せてっ』
忘れちゃった、と微笑み、てへっと彼女は自分の頭のてっぺんをこつんっと小突いた、わざわざ変な仕草まで仕掛ける。駄目だ、落ち着け自分大人になるんだ。
「ディランは?やってないのか?」
『ディランはね、ミーは課題なんてしなくても答えられるししないよって』
「提出しないつもりか」
『多分…あああ早く!マーク!ぜぜったい今日当てられちゃうんだってば!』
「ごめん、俺もやってないんだ」
『え、ううっうそっ!』
「嘘」
『なっ…、マークの馬鹿!』
「Sorry about that.」
(ごめん、ごめん)
軽く彼女をからかってみただけなのにこの反応はいつ見ても飽きない、だからついしてしまうし英語に慣れてるため俺だって無邪気に元通り。課題のノートをほら、と渡せば一瞬に表情が笑顔になる。さっき廊下で転んで出来た傷のためにも絆創膏を貼り彼女は照れくさそうだった。
「It returns it when ending.」
(終わったら返せよ)
『Got'cha!』
(了解!)
俺のノートを持って敬礼をし一目散に自分の教室へ向かう所、彼女はくるりと振り向いて
『I will do something for you sometime!』
(いつか恩返しするね!)
ああ、と返せばまた廊下を走る大きな足音。そのたびに誰かにぶつかり謝る、隣に居たカズヤが何だか不吉な笑みを浮かべていたから尋ねれば頑張れよ、と一言いわれただけだった。何がと尋ねればカズヤは死人のような目つきをした後ハァ、と頬杖をついたのだった。
***
続きます。