ぱりん、グラスが割れた音が部屋に響く。吃驚したけどグラスの欠片を素手で拾ったらちくりと痛みを感じたから、普通は急いで諸刃の欠片を手放すんだろう、だが私は握り締めていた。生臭さくて真っ赤と表現したいのだけれど、どす黒くて汚い液体が一滴、二滴と真っ白い床に落っこちた。次に大きなドアの音。フィディオは綺麗な青の瞳をまん丸にしてから私の手のひらから欠片を取ろうと必死に言うのだけどそれに反発するように私は更に欠片を強く握り締めた。どす黒い液体は止まることを知らないようです。


「やめて、やめてくれ」


彼がとても悲しそうな声を出して悲願する光景に私の頬は上がるのだ、気持ち良くてたまらない。今にも泣きそうなフィディオ、その姿が胸を苦しめたからつい欠片を放して、しまった。冷たくて透明だったグラスの欠片は今じゃ赤黒くて私の体温が染み付いてることだろう。
ほっとしたような彼の表情には苛立ちが湧く、そして抱き締められた体温には殺したいように憎くなる、突き放したいのだけれど出来なくって。右肩にはじんわりと布に滲む涙は彼の悲しみの表現方法。そのたびにずしりと重みがかかる、こんなに水は重たかったっけ。


「嫌だよ、俺は君が必要なんだ、だから、だから」


いつの間にか広いと感じるようになったフィディオの背中に自然と腕を回すと震えてて、私の目からも透明な水が溢れてて、赤黒く染まった床に落ちるととても綺麗な赤になって元の色に戻って。

痛々しい欠片なんて関係ないように踏みつけていた彼の逞しい足にも赤が広がっていたのだけれど、彼の赤はとても綺麗だったから、私はまた諸刃を握り締めるのだ。


















***

ごめんなさい

100918



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