プルルルルルッ
親が居ない夜に私の携帯の着信音が響く。面倒くさいので無視しようとするが永遠のように続く着信音に私はのそのそと携帯を取り通話ボタンを押した。


『もしもし』

「あ、もしもし?俺だよ!」

『オレオレ詐欺はご遠慮願います』


ピッと電源ボタンを押すがまた再コール音が鳴る、しかもさっきと同じ番号がディスプレイに表示されていた。もう、なんなの…只でさえ眠れないのに

それでもしつこいコール音に耐えれない為にもう一度通話ボタンを押した


『もしもし』

「俺、一之瀬一哉!」

『あ、そうですか』

「なんか冷たいね、もっと喜んでよ」

『………………。』


彼、一之瀬くんから電話が掛かってきたのは嬉しい。なにせよ、アメリカへ帰ってしまったのだから勿論、彼が嫌いで嫌いですごく嫌いになった

そうだったんだけど。
そうだったのだけど。

彼が、恋しくて恋しくて
すごく辛くて。

声を耳にしただけで、胸が狭くなる。


『…ッ、ふぇ………』

「泣かないで、よ」


こんなのあたしじゃない泣くのはやめたのに。彼に、彼の、声や、顔を見たときは、私も笑顔でいたいはずなのに。

どうしても恋しさで辛くなってしまう


「お願いだから泣かないで」


さっきの明るい声が寂しそうな音程に変わる、目から溢れる涙は止まない。


『会い…た、い』


こんな言葉を返しても彼を困らせてしまうだけ、分かってるのに告げてしまう口が憎い。


「俺も、会いたい」


うん、分かってる。一之瀬くんだって同じなんだって。私が、背中を押したの。

いってらっしゃいって

だけど後悔してたりする

あの時、一之瀬くんが行こうかなという呟きを否定したら良かった、だとか。あの時、行かないでと涙を溢せば良かった、とか。あの時、嘆いて彼を離さなかったら良かった、とか。

違う。
私は、そう願うんじゃない
彼を、一之瀬くんを応援する事。


『……ねぇ、甘えてもいい?』

「珍しいね、良いよ、今出来る事なら何でも」

『キス…して、眠れないから一之瀬くんのせいで。』

「んー…分かった、目閉じて?」

『………閉じたよ』

「そのまま、顔少し上げて」


言うままに1人、温かい布団の中。
彼の声に体が熱い。


「愛してる」



耳からリップ音が響いた






















***

一之瀬くん大好きです






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