本心なんて、見せるものか。
「敦史、どうするの?」
あたしは今、公園のベンチに座っている。隣には、高校の同級生の敦史。
敦史が誘ってくれたのだ。別に嫌じゃなかったし、ついて来た。
「そうだな・・・公園でのんびりでいいんじゃね?」
なんだ、何も計画ないのか。
特別話したいこともないし、どうしたものか。
何気なく髪を耳にかけると、敦史がなぜか驚いた顔をした。何だろう。
「・・・なあ、彩子」
「何?」
「俺、彩子が好きだ。」
突然の告白。敦史、あたしなんかのどこがいいの?
「・・・敦史、」
「だからこそ聞きたいんだけど彩子、俺に何か隠してるだろ」
そう言われた途端、自分の中の仮面が剥がれ落ちた気がした。
ああ、まずい。このままじゃ、
「・・・隠しごと?なんのこと?」
「嘘つくなよ、じゃあ腕見せろよ」
風があたしの髪を揺らす。冷たい。
その風のおかげであたしは一気に冷静になった。ゆっくりと、いつも通りの仮面を貼りつける。
「見えたんだね」
仮面をつけた途端、敦史はあからさまにほっとした。
そうだよね、敦史は仮面をつけたあたしが好きなんだよね。
心の奥の細波を隠すように声をかけた。「今日、隠すの忘れてたんだよね、あー、やらかしたなー」
「・・・彩子、さっきも言ったけど、俺は彩子が好きだ。だから、彩子の秘密も受け止める。付き合ってほしい」
敦史は私の手をとって、手のひらにキスを落とした。
別にそれ自体は嫌じゃないけど。でもね。
あたしの手を見つめたまま、顔を上げない敦史に声をかける。
「・・・あたしの中の闇を見せられるのは、敦史じゃない。」
キスの、お返し。
ただ、君は私を受け入れられないだろうから、唇ではなく額に。
敦史と目が合った瞬間、何かを怯えるような表情をした。
荷物を持って、敦史から離れる。
「じゃーねー」
振り返らず、敦史に向かって手を振る。
今、敦史はどんな顔をしているんだろう。わからない。
そうだ、家に着いたら、美結に電話しよう。
仮面を外せる、唯一の親友に。
仮面をつけたピエロ
2013/03/02
←