俺じゃ、だめなのか。


いつも笑顔がかわいくて、快活な彩子が好きだ。
県内底辺のレベルの高校なんかじゃ、まともな女はいない。ただのうるさいギャルばかりだ。
こんなことを言うと、他県の同レベルの高校に怒られてしまうかもしれない。でも少なくともうちの県では、そうなんだ。

なんで彩子がこの高校に入学したのか、いまいち俺にはわからない。根っからの馬鹿な俺と違って、とても要領がよく、頭の回転が速い。あの様子じゃ、勉強をすればもっと上のレベルの高校に入れたはずだ。

まあ、こうしてこの高校で出会えたんだから、なんでもいいか、と気楽に考えていた。
今こうして、初めて彩子と二人きりで放課後の時間を過ごせるんだ。幸せだ。

「敦史、どうするの?」
「そうだな・・・公園でのんびりでいいんじゃね?」

デートに誘ってみたものの、無計画な俺。なんかもう、告白したい。

ふと、彩子の手を見た。長袖のシャツからちらっと見えた手首には傷が、あった。あれは、まさか。
そんな馬鹿な。彩子は闇を持たない、明るい女だ。

「・・・なあ、彩子」
「何?」
「俺、彩子が好きだ。」

無計画にもほどがあるが、言うしかなかった。本当の彩子を見るために。
あの傷は、自分でやったようにしか見えないじゃないか。

「・・・敦史、」
「だからこそ聞きたいんだけど彩子、俺に何か隠してるだろ」

そう言った途端、彩子の顔から表情が消えた。冷たい、瞳。あんなの見たことない。

「・・・隠しごと?なんのこと?」
「嘘つくなよ、じゃあ腕見せろよ」

風が吹いた。・・・こんなにここ、肌寒かったか?
いや、彩子の視線に凍りつけられているんだ。まるで、雪の女王のように。

「見えたんだね」

突然、彩子がほほ笑んだ。凍りついていた空気が溶けて、無意識のうちにため息をついていた。

「今日、隠すの忘れてたんだよね、あー、やらかしたなー」
「・・・彩子、さっきも言ったけど、俺は彩子が好きだ。だから、彩子の秘密も受け止める。付き合ってほしい」

思わず彩子の手を取り、手のひらにキスをした。
お願いだ、この気持ち、届いてくれよ。

「・・・あたしの中の闇を見せられるのは、敦史じゃない。」

そんな言葉が聞こえて、俺の額に彩子の唇があてられて。彩子の瞳には、深い闇が映っている気がして。
はっとしたときには、彩子は俺から離れるように歩いていた。

「じゃーねー」

いつもの快活な彩子が手を振りながら去っていくのを見て、馬鹿な俺でもふられたことがわかった。
ただ気づいたのは、今まで好きだった彩子の性格は、本心を隠し通したものなんだということだ。










(彩子、お前の心ってどこだ?)
(あの笑顔さえも、偽りなのか?)







Lips Drugさま提出
お題:掌なら懇願


2013/02/27











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