変化って恐ろしい。






高校に入学した私は、たぶんすごく変わった。
具体的にどうとかは言えないけど、あんなに嫌っていた男という存在を、慕うまでになったのだから。
男が嫌いだったからといって女が好きだったわけじゃない。女は女で男よりも信用できない生き物だと思っていた。

「何、そっぽ向いているんだよ」

隣で私の自転車を押してくれている孝浩が笑いながら言った。

「や、考え事してた」
「なんだよ、美結は俺の隣はおもしろくないっていうのか」
「そうじゃないよ、そんなこと言ってないじゃん、むしろ、」

危ない、口を滑らすところだった。
こんなの、中学生の私じゃ考えられなかった。今でも口にするのは恥ずかしい。なんだかキャラが違う、そんなことを考えてしまうんだ。
隣で孝浩はにやにやしている。

「むしろ、なんだよ、気になるなあ」
「うるさいなんでもない」「えー聞きたいなー」
「もう何言おうとしたか忘れちゃったなーごめーん」
「嘘つけ」
「嘘じゃないよー」
「棒読みだよ。…言ってくれないと、進まなーい」

孝浩は立ち止まってしまった。これでは家に帰れない。私は眉間にしわを寄せたけど、孝浩はいまだににやにやしている。
部活後、冬空の下で立ち止まっているととても寒い。私はついに覚悟を決めた。

「…美結、なんで後ろむくんだよ」
「無理、後ろを向いてじゃないと言えない。」

孝浩に背中を向けた状態で、息を吸った。

「むしろ、楽しいし…幸せだなって、思う」

ああ、手は冷え切っているのに、顔は熱い。しかも、孝浩は何も言わない。

「…なんで何も言わないの」
「えーいやよく聞こえなかったなーなんて」
「嘘つけ!!だいたい、孝浩は…」

ちゅ。
振り返った瞬間、冷たかった唇が温かくなった。

「あー、美結真っ赤でかわいー」
「…うるさーい!!」

あんなに人間という生き物が嫌いだった私は高校生の今、孝浩という男を好いている。この一点だけで、やはり私はすごく変化したと言い切れるのだ。










(美結大好きだよ)
(…ありがとう)




Lips Drugさま提出
お題:唇なら愛情


2013/02/11

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