稲妻11 | ナノ


「行かなきゃ」マキシムは言った。
「何処へだよ?」という俺の問いかけは無視されたようだ。
俺は追いかけた。
この道は舗装されていない上、ゴミやら木の枝やらが散乱していて(エルビンは即掃除するだろう)とても走りづらい。
「おい待てよ!!」
声を掛けても聞こえてないようだ。
全力で走って、やっとのことで追いついた。

「何でいきなり走りだすんだ・・・?」
マキシムは意外そうな顔をして言った。
「知らないのかよ?今日サーカスが来るって」
そのあっけない理由に、俺は気が抜けた。
「サーカス?そんな子供だまし、見に行く方がアホだ」
「ちゃっちいのじゃなくて、シ〇ク・ドゥ・ソレ〇ユ級のやつだって」
「シ〇ク・ドゥ・ソレ〇ユ?そんな訳・・・」
マキシムに渡されたチラシには、かなりすごそうな写真が載っていた。
「でも広告詐欺かもしれないだろ!?」
「前にも俺見たことあるけど・・・すごかったぜ?」
「本当か?」「ああ!」
普段なら信用しないけれど、マキシムの熱意やらその他諸々で、俺も夢中になってしまった。
「だから、早く行かなきゃいけないんだ!」
「・・・お前、チケット持ってるのか?」
「え?〇×新聞についてただろ?」俺の家で取っているのは★●新聞だ。
「ま、このチケット4名様までってことになってるから、一緒に行けるみたいだぞ?」
そう言うとマキシムは俺の手首を掴んで走り出した。
「え・・・ちょっと待て」
転びそうになる。
マキシムは俺の体を支えながら止まる。
「・・・もしかして、腹減ってんのか?」
違う、という前にポケットからビスケットを出したマキシムは、俺の口にねじ込んだ。
日本でいう、ポッキーゲームの要領で、彼の口から。
「!?」
「さ、行こう、席なくなるからさ」
そういってまた走り出す。手首は握られたまま。
俺はただ、転ばないようにするしかなかった。


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