「行かなきゃ」マキシムは言った。 「何処へだよ?」という俺の問いかけは無視されたようだ。 俺は追いかけた。 この道は舗装されていない上、ゴミやら木の枝やらが散乱していて(エルビンは即掃除するだろう)とても走りづらい。 「おい待てよ!!」 声を掛けても聞こえてないようだ。 全力で走って、やっとのことで追いついた。 「何でいきなり走りだすんだ・・・?」 マキシムは意外そうな顔をして言った。 「知らないのかよ?今日サーカスが来るって」 そのあっけない理由に、俺は気が抜けた。 「サーカス?そんな子供だまし、見に行く方がアホだ」 「ちゃっちいのじゃなくて、シ〇ク・ドゥ・ソレ〇ユ級のやつだって」 「シ〇ク・ドゥ・ソレ〇ユ?そんな訳・・・」 マキシムに渡されたチラシには、かなりすごそうな写真が載っていた。 「でも広告詐欺かもしれないだろ!?」 「前にも俺見たことあるけど・・・すごかったぜ?」 「本当か?」「ああ!」 普段なら信用しないけれど、マキシムの熱意やらその他諸々で、俺も夢中になってしまった。 「だから、早く行かなきゃいけないんだ!」 「・・・お前、チケット持ってるのか?」 「え?〇×新聞についてただろ?」俺の家で取っているのは★●新聞だ。 「ま、このチケット4名様までってことになってるから、一緒に行けるみたいだぞ?」 そう言うとマキシムは俺の手首を掴んで走り出した。 「え・・・ちょっと待て」 転びそうになる。 マキシムは俺の体を支えながら止まる。 「・・・もしかして、腹減ってんのか?」 違う、という前にポケットからビスケットを出したマキシムは、俺の口にねじ込んだ。 日本でいう、ポッキーゲームの要領で、彼の口から。 「!?」 「さ、行こう、席なくなるからさ」 そういってまた走り出す。手首は握られたまま。 俺はただ、転ばないようにするしかなかった。 back |