「ここで、一週間ぐらい前に飛び降り自殺があったらしい」 「ああ、確か死んだ奴綺麗な娘だったよな・・・」 レオーネとエステバンは、あるビルの屋上に立っていた。 それは自殺するため・・・ではなく、興味本位である。 「まさかお前、その死んだ人をナンパでもしたんじゃないだろうな?」 「なわけない。確か、ノルウェーだったかスウェーデンだったか、北欧の方の奴だろ?そんな奴一人も知らねえ」 「じゃあ、何でここで死んだんだろうな?」 「ヨーロッパの、ドイツとかフランスとかの所で死ねばいいのにな」 「なんだその責任転嫁」 吹きつける風は、季節相応に冷たい。 二人が自殺騒ぎを知ったのは、自殺があってから4日後だった。普段彼らが生活しているエリアから遠かったうえに、試合があったので誰も言わなかったのである。 「発見したのは、タクシーの運転手だよな」 「二、三時間も気づかなかったらしい」 「ここあんま人いないからな・・・」 しばしの沈黙。 「なあエステバン」 「何だ?」 「なんかさあ、今、死んだ奴の気持ちなんとなくわかった気がする。」 「はあ?」 と首を傾げるエステバン。 「ここにいるとさ、段々死んでも良いって気になるんだよ」 「じゃあ今死ぬのか?」 「いや、俺はまだ死なねえ。まだサッカーしたいし、それに女の子いっぱ・・・」 エステバンはレオーネの頬を叩くと、 「今死んでもらおうか?」 「いやいやいや、冗談だよな・・・?」 エステバンは向こうを向いたまま。 「こっちだって冗談だから、お前が大事だから。な?」 「・・・わかってる」 風はさっきよりもまた強くなった。そして、 「そろそろ帰るか。テレス達心配するだろ」 「そうだな」 二人はビルを後にした。 その時、エステバンに透けた女性の姿が見えたのはまた別の話・・・ back |