詐欺師との日々
教室に仁王の姿がなかったので、どうせ屋上でサボっているんだろう。
それを思ったらなんだか私もサボりたくなって、気づいたら扉の前に立っていた。
自分の思うまま屋上の重い扉を押すと、爽やかな風が私の頬を撫でた。
目の前の柵にもたれるように、何かをしているのは、教室にいなかった仁王だった。
『にーお』
「…ん?なまえか。お前さんもサボりか?」
『うん』
「悪いやつじゃのぅ」
『それ仁王に言われたくないよ』
「ま、そうかもしれんのぅ」
仁王は私から視線を外して、シャボン玉を始めた。
こうやって授業をサボっては、シャボン玉をしているときがある。
本当に不思議な人物だと思う。
『面白い?』
「何がじゃ?」
『シャボン玉』
「そうじゃのー。これやっとるとすごい不思議な気分になるんよ」
あんたのが不思議だっつーの、なんて声に出そうになって焦った。
「これ、結構高いとこまでいくじゃろ?」
『うん』
「すごいじゃろ」
『は?』
「だから、高いとこまでいくのがすごいって言っとるんじゃ」
『は、はあ…?』
「そんだけ」
『…そうですか』
私がうなだれていると、仁王は言葉を続けた。
「屋上だと空が近いように思えてな。空に消えてくこいつらが切ないように思えてくるんじゃ。不思議じゃろ?」
『仁王だけだよそんな奥が深いこと考えてるの。シャボン玉ってそういうもんじゃん』
「まあな。そろそろ授業も終わるけぇ、教室戻るぜよ」
そう言って、仁王は私の手をとった。
『何してんの』
「手つないでいこうかと思ってのう」
『なんか企んでるでしょ』
「プリッ」
実はこんな日々が大好きで、ずっと続けばいいとか思ってる。
*end*
―――――
ちょっと強気な子になってしまった。
ぽけーっとしてるような子が可愛いと思うのです。