好きだけど
立向居は円堂のことが大好きで俺は立向居が好きで…。ただ、立向居の円堂への気持ちは純粋なもので、俺の立向居への気持ちはまた別のもので…。
立向居は俺をどう思ってるのだろう?きっと良き先輩としか思っていないだろうな。
「円堂さん…かっこいい〜!」
ほら、また俺の隣で円堂円堂と繰り返す。この時が一番の苦痛だ。俺がそばにいるのに目線は円堂だけ見ている。だって、立向居にとって俺は良き先輩止まりで、円堂には負けているから。それはわかっていることだけど少しでも振り向いてくれたらなぁなんて、欲を言えば俺だけを見てほしいけれど。まぁ、無理だろうけどさ。
「立向居、今夜も特訓するか?」
「え!いいんですか?」
「俺はいいぜ」
「ありがとうございます!」
ただ、少しでも立向居と一緒にいられたらそれでいい。俺の勝手な欲望も、立向居には必要ない。だから俺はずっと胸の奥にこの思いをしまい続ける。気付かれないように。ずっと、永遠に忘れるまで。きっとそれが立向居にとっても、俺にとっても良いはずだから。
「ただ、そばにいるだけでいい」
ぎゅっと胸が苦しくなる。この苦しささえ、理解してもらうことも出来ない。否、理解させるわけにはいかない。
(勇気…)
俺は心の中だけで立向居の名前を呼んだ。