帝国戦 前編





 
 試合当日


「みんな、紹介するよ!今日の試合、助っ人に入ってくれる松野空介だ!」

「ボクのことはマックスって呼んでいいよ。」


変な奴が助っ人で入ってきた。
本当に、変な奴だ。
どうしてネコミミ帽子をつけているんだ〜とか、暇つぶしでサッカーできるのか〜だとか。
まあ、オレもサッカー部に入って数日も経ってはいないんだが。


「あ、君羊はサッカー部に入ったんだ?」

「うん、よろしく。」

胸の内をちくりと刺されるような台詞だったが…何か意味有り気だ。
けれど、オレの名前を知っていたのは意外だった。
マックスとは同じクラスでもないし、ましてやオレは相手を知らない。
野球部の時はそれなりに活躍はしていたけど、オレ、そんなに有名人だったっけなぁなんて考えていると、マックスは陽気に挨拶をしてにこりと微笑んだ。
うん、弟みたいな存在だと思う。兄弟がいるならば…末っ子だ。
試合に関係ないことを考えたら突然、外から妙にデカイ音が聞こえた。

「なんだ?」

「来たみたいだな…」

外に出ると、曇り行きは怪しく、いままで青かった空が急に雲でどよめいた。
霧みたいなものが視界を塞いでいて、目を凝らしてみると先には一台の巨大なバスが雷門の校舎前に止まっていた。
バスが止まると、中からぞろぞろと人が…。
ぞろぞろと来過ぎじゃないか…?
まぁ、とりあえずぞろぞろと人が出て来て、長いレッドカーッペットを意味も無く地面に転がしていた。
その周りに先ほどのぞろぞろがサッカーボールを足に押さえ、顔前に腕をやる。
全員がだ。
見ているだけでなんの軍隊だと思うほど、それは滑稽…いや、この先は言わないでおきたい。

とりあえず、そのレッドカーペットの上をユニホームを着た帝国学園のサッカー部らしき人物達が歩いてきた。
前方からゴーグル、チビ、デコ上げ、眼帯、フェイスペイント、マスクに…おい…。

「なんか…中学生っぽくないやつがいるがあれは監督か?」

「どうだろうか。わかんねー」

隣にいた半田が口をぽかんと開けたままその光景を食い入るように見ながらオレの呟きに答えた。
良く見ろ、中学生に見えないやつが1人2人…どんだけいるんだよ、おい。



「鬼道さん、なんでこんなチームと試合を?」

二列目にいたデコ上げが先頭にいたゴーグルに話しかけた。
前にいるのは鬼道というのか。
しっかし、あのデコ上げ、眩しいな。
ゴーグルも、見えるのだろうか?
ツッコミが追いつかない。くそっ、なんでみんなつっこまないんだ!

円堂がその鬼道という男の前に走よってなにやら話しているが、聞こえない。
かるい挨拶かな。


「コート、初めてだからウォーミングアップさせて欲しいってさ。」

「へぇ、」


帝国の連中がフィールドに入り、ボールを蹴り上げると同時に。

「な…なんて動きだよ…っ」

これまで見たこともないような動きでそいつらはボールを目まぐるしく動かし始めた。
眼帯野郎の動きが全く見えないし、巨体の男のヘディング…あれは人間か?
とにかく凄い。凄すぎて、皆の足がすくんでいた。もちろんサッカーに詳しくないオレだって分かる。
奴らは強い。強いからこそ怖い。
突然、中学生に見えない男がボールを蹴り上げると、デコ上げのボレーシュートで鬼道にまわり、そして鬼道がボールを蹴ると同時に、そのボールは円堂に向かってきた。
とっさに円堂がボールをキャッチしようとするが、手にボールに触れた瞬間、円堂の足が後ずさりした。それ程の威力なのか。ただ蹴っただけに見えたのに。

「キャプテン!」

「円堂っ!」

一度は円堂の手に収まったボールは堪えきれず床に転げてしまった。円堂の手が黒く炭付いたような後が見える。
手がぶるぶる震えていて、見るからに痛そうだ。

「大丈夫か?円堂…。」

「っく…」

円堂の目線がボールから鬼道に移るとニタリと上口を弧に曲がらせた。
拳を握り、今度は体全身をぶるりと振るわせた。

「円堂…?」


「面白くなってきたぜ!!!」




円堂は元気だ!



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