廃部危機



痛い…体中が軋む。
尻の筋肉は座る度にビリビリとするし、腕の関節が痙攣しそうだ。
昨日、一ヶ月ぶりに勢い良く走ったせいか、やはり体が鈍っていたようだ。
筋肉痛だなんて…。

「うぐぐぐ…いてぇ」

ふくらはぎが張ったのはいつが最後だっただろう?
突然タイヤを引きずりながら走るなんて自分でもバカだなと思た。
けれど楽しかったから、ついやり過ぎてしまっただけなんだ…!
でも明日は土曜日。
学校が休みだと思えばまだ気持ちは楽だ。

「ふぅ…」

「お疲れだな」

「ひわわわわ!!」

いきなり背後から野太い声がするもんだから先生かと思った。
振り返ると体格の良い胴体と厳つい顔が見えた。

「…染岡か…」

「俺で悪かったか」

「い、いやぁ」

そりゃ、誰だって後ろから野太い声の男からより可愛い女の子の声がした方が嬉しいけれど…いやいや、そうじゃなくて。
クラス違う染岡がどうしてここにいるんだろうか。
しかも何気隣には風丸がいた。

「円堂が明日について話しておきたい事があるから昼休み、教室に来いだってさ」

「え?明日何かあんの?」

「お前…」


何やら染岡が呆れたような表情になった。
風丸ですら「円堂から聞いてないのか?」なんて言われるから「サッカーやろうぜ、と言われた」と笑いながら言ったら染岡に拳骨を食らった。
今の、オレが悪かったのか…?

風丸が染岡を宥めるように「明日は帝国と試合するんだ」ってオレに教えてくれた。

帝国…?
国と戦うんっすか?
なんて言ったらまた染岡に怒られそうだったのであえて口にはしなかった。
いや、出来なかった…

「帝国学園はフットボールフロンティアで連続優勝している学校だよ」

「そんな学校となんで雷門が戦うんだよ」

「理事長の娘が帝国に負けたらうちのサッカー部、廃部にするって言い出したんだとよ」

ああ、だからか
今の、染岡の台詞からすると理事長の娘はサッカー部を廃部させたいって事か。
まぁ、弱小チームがいつまでいても得にはならないって考え方なんだろう。

「サッカー部も大変だなぁ」

「他人事じゃねーんだぞ」

「わ、わかってるって!」

今にも胸ぐらを掴んできそうな染岡。
顔が顔なだけにこわい…
風丸は止める気などさらさら無いようだ。
うん、逃げたい!

「あー、それで、昼休み円堂のトコに行けばいいんだろ?」

とにかく話の流れを戻さなければ休み時間も終わってしまう。
なんて考えたのと同時にチャイムがなる。
タイミングが良いのやら悪いのやら。
授業に遅れるぞ、と渋い顔をした染岡を自分の教室に帰し、次の教科の用意を机にだした。
確か次は数学だったよな。

「あ、苗字。次は英語だぞ。」

「へ?マジかよ…」

「昨日の放課後に先生が言ってたじゃないか」

「…風丸…それは昨日のうちに聞きたかったぜ」

チクショウ。
聞いて無かったぞ。
英語なんて持ってきてない!

別のクラスから借りるにも既に遅く、英語の先生が教室に入って来てしまった。
仕方なくオレは隣の席の女子に教科書を見せてもらう事になり、その光景が…異様に恥ずかしかった。
まぁ、苦手な部分を教えて貰えたから良しとするか。
クラスの男子からからかわれたのは云うまでもない…。

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