給食





尾刈戸中にて私、苗字名前はただいま強敵を前にして足がすくんでおります。


「畜生!なんで今日もあるんだよ!」


隣の席に座る幽谷が苦笑いをしながら私を見る。見るな…そんな目で俺を見るな!って赤面しながらツッコミたい。幽谷たん…じゃなかった。幽谷…私も見つめてそんな、恥ずかしいな、オイ。


「幽谷た…鯖の味噌煮食べる?」

「たって何?『た』って?!…自分で食べなよ」

「えー…好きでしょ?幽谷は鯖の味噌煮。え?大好物だって?そっかそっかー!それなら仕方ない。私の分の味噌煮をやろう。たんと食いなさい」

無理矢理箸のつけていない自分の味噌煮を幽谷の食器に入れた。「名前は嫌いなものが多いんだよ」と言いながらしぶしぶとその味噌煮を幽谷は箸で切って口に運ぶ。唇に味噌が着いて可愛い。というか、食べ方があぐ、んぐっとかエロい。幽谷たんエロいよ。君の唇についた味噌を舐めまわ…
「…はい」

「え」


幽谷が小さく切られた味噌煮を箸にとって私の口の前に持ってきた。

「一口くらいは食べないと」

「う…うんうん…」

これは俗にいう彼女が彼氏に『はい、あーん』というシチュエーションじゃないか。つまり今、私は彼氏役で幽谷たんが彼女役になり、幽谷たんは鯖の味噌煮を私に食べさせるためにあーんしてほしいという目で私見ながら口までその鯖の味噌煮をもってきて、私があーんするのを待っていると言うわけですね、分かります。うん、頭は正常だ。説明文として書けと言われたら無理だけど。


「あ…あー」

「早く口開けてよ」


「そこはあーんってしてと言いなさい。」

「い、嫌だよ!」


ボッと顔を火照らせて、耳まで赤いとか可愛いから、もう可愛いすぎたから。私はかたくなに口を閉じていると、もどかしく小さい声で、「あー…んして下さい」と敬語で言った。敬語大好きだよ、敬語。ただし幽谷たんに限る。


「あーん」


もぐもぐ。あれ、鯖の味噌煮ってこんなに美味しかったっけ?いや、きっとこれは、幽谷たんの愛が詰まっているんだね。

「私、幽谷たんにあーんして貰えら嫌いなものでも食べられるよ、きっと…ハァハァ」





それからの幽谷は二度とあーんしてくれなかった。なにかいけなかったのだろうか?






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