「ねぇ晴矢。わたしってブスなのかな?」
「はっ?」
ぽかんとした晴矢の顔が妙に面白かった。
わたしはね、可愛いかブスかって言われたらブスだと思うの。アイドルみたいに睫毛が長いわけでもないし、スレンダーでもないし、そう…わたしは行き遅れたファッションセンスしかない。クラスの子右から左まで可愛い子揃いだし、彼氏持ちの子なんて綺麗に化粧で着飾っている。わたしなんか化粧をしたこともないからあんなに豹変するだなんて信じられないくらいだよ。こんなわたしが晴矢と一緒にいて、釣り合うわけないよね。なんて言ったら晴矢のやつ、「わかってるじゃねーか」なんて言いながら腹抱えて笑っていた。昔からデリカシーのない晴矢に今更腹を立てても仕方ないので笑いがおさまるまで待つことにした。
だいぶの時間、笑っていたがわたしがしんと静かに待っていることに何かを感じたのか「わりぃ」と一言謝ってあぐらをかいた。
「今日ね、一緒にいた友達に言われたの。化粧でもしないかぎりブスだって。でも、わたし、その子より可愛くないからなにも言わなかったけど、やっぱりわたしってブスなのかなぁって思って。」
「へぇ〜」
なんとも興味なさげに晴矢は返事したからそれ以上わたしも言うのをやめた。晴矢のあぐらに出来た隙間に頭を乗せて、寝転がる。すると晴矢はわたしの髪をくしゃりと掴んでは、手櫛で整えた。同じことを幾度か繰り返して、その手はわたしの肩に添えられた。ふと上を見遣れば頬を真っ赤にした晴矢の顔が見えた。
「周りがいうほどブスじゃねぇよ。お前は…」
「そうかな…?」
睫毛が長くなくたって、化粧が上手くなくなたって、ファッションセンスが悪くたって、細くなくたって…お前はお前だろ。なんて言われたら嬉しくないはずがない。ぎこちない言葉で、似合わない台詞だって晴矢がわたしのために考えた慰め言葉は今のわたしには最高の褒め言葉に聞こえる。
「ありがとう。晴矢」
ブスだとか、可愛いとか、そういうのは関係なくて、わたしは晴矢のことが好きで、晴矢もきっとわたしのことが好きで、それだけで十分なんだ。やっぱり晴矢は優しい。ツンケンしている時もあるけど、そんなところも全部含めて晴矢のことが好きなんだ。
わたしは寝転んだ向きを変え、晴矢の腰に抱き着いた。
「好きだよ、晴矢」
「ったりめーだ、ばか」
恥ずかしがるように片手で顔を覆う晴矢の頬に身体を起こしてキスをした。