相思相愛




吹雪君はみんなに優しいよね。乙女ゲームでたとえるなら難易度の高いキャラクター。すぐに仲良くなれるのに、相手はこっちの気持ちに気づくのが遅い。そういうタイプの人間には単刀直入に告白するに限る。


「吹雪君のこと好きだよ。」

「ありがとう、僕も好きだよ。」


にへらとふやけた笑いをしながらちょっぴりだけ頬を染めた吹雪くん。可愛いんだけど、絶対にわかっていない。

わかってないんだ!
友達として好き、じゃくて恋的な意味で私は吹雪君のことが好きなんだよ。


「吹雪くん。そういう意味じゃなくて…」

「え、どういう意味?」

「あのね。」


突然吹雪君の顔色が悪くなった。もしかして恋の方って言ったら吹雪くん引くのかな。君を恋人として見れないってことなのかな?なんだかそれはそれでショックだ。

今の関係のままでいいと思われているのはとても幸せなんだかさびしいんだか複雑な心境だよ。でも、私は吹雪くんのこの思い伝えなければならない。絶対に。他の女の子と歩く姿なんて、撃沈してからでないとみたくない。


「吹雪君のこと、友達としてじゃなくて…一人の男の子として好きなんです。」



吹雪くんの顔が強張った。




長い沈黙が私の心臓をうるさく聞こえさせる。
痛いよ…この時間がものすごく痛い。逃げたいな、この沈黙ってつまりは撃沈を指しているんだよね。他の女の子と歩く吹雪くんをこれから見ることになるのかな。


「あー…の…」





「なぁんだ」



はじめの笑顔と同じにへらとふやけた笑いに戻った。
なぁんだなんて可愛い口調で言っているがなんだとはなんだ。こちとら必死で告白しているのに、真に受けてないのかな?今日は4月1日じゃないよ。


「そんな事かー」

「そんな事ってなに!?」


片手を後頭部に持っていって、自分の頭をさする吹雪くんの癖。いつもた愛らしく思えるのになんだか腹が立った。そんな事って失礼だろ。吹雪くん、君がそんな人だったとは思わなかったよ!


「もういいよ、吹雪くんのばか…」

ぐすっとたれてきた鼻水を擦って顔を背けようとした。けれど、それを吹雪くんの手によって顔、というか頬をがしりとつかまれた。
ひい、痛いよ吹雪くん!


「ひ…ひはい…」

「名前ちゃん。僕まだ返事してないよ」


返事ってなにさ、そんな事か、が返事だよ!吹雪くん、君が言う言葉なんてわかってるんだよ!


「僕と付き合ってよ、」

「はひ…ほがっ!」

私の頬をぐりぐりと伸ばしたり伸ばしたり、回した。


「最初はひやっとしたよ。そういう意味じゃないっていわれて…僕、友達としてしか見られてないのかなって…そしたらいきなり告白してくるんだもん。びっくりしちゃったよ。」

「……」


つまりはじめから吹雪くんは恋的な意味の好きだと思っていたわけですか、そうですか。

「ふ、ふふひふん…」

「先に言われちゃったけど、僕も名前の事すきだよ。」



もちろん恋愛対象としてね!





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