「尾白くん!今日もいい!?」
「いい、けど」
「やったぁ!うっわぁ今日もモッフモフ!」


ミョウジさんは毎日のように俺の尻尾に触りに来る。
別に嫌ってわけでもないし、むしろこういった反応は慣れてる。
尻尾のない人から見れば珍しいだろうし、触る機会も少ないだろうから。
…でもさ、


「ミョウジさんにも尻尾あるじゃないか…しかも耳まで」
「自分の触ってもつまらないじゃない!それに尾白くんのおっきくて気持ちいいんだもん!」
「うん、わかったから言葉のチョイスを考えようね?」


もう高校生だってのに、その言葉の言い回しは倫理的にどうかと思うんだよね。

ふ、と少し下にある彼女の頭が目に入る
ピンと伸ばされたソレはまさに猫耳と言って然りだ。
俺のよりよほど柔らかそうな毛で覆われた耳は、触ってくれと言わんばかりに時折ぴくぴくと動く
その起用さは人間の耳には真似できないだろうな。


「ミョウジさん、耳触ってもいい?」
「うん!いいよ!」


さあどうぞ!とお辞儀をするように屈む彼女。そんなことしなくても、いつも充分ちょうどいい位置に頭があるのに。可愛いな。


「やっぱり猫耳って気持ちいいね。すごく柔らかい」
「ふふふ!なんかくすぐったい!」


堪らないと言うように首を傾げる彼女。
笑った時に見える八重歯にドキッとしてしまう


「(いけない、いけない)あー、尻尾もいいかい?」
「あ」


ミョウジさんの返答を聞く前に、俺よりも細くしなやかな彼女の尻尾を手に取る。
長さはお互いに変わらないぐらい
それでも随分と愛らしく、掌をくすぐる感触が気持ち良い。


「ミョウジさん、俺よりよっぽどいい毛並みじゃないか…」
「っ、ん!」
「っご、ごめん!」


彼女の顔を見て瞬時に現状を把握する
尻尾を持つ個性の人は、高確率でその部分が過敏にできている。
強化すれば強靭な武器にもなるが、大抵は弱点にもなり得る。
つまり、感度が良すぎるということで…


「本当ごめん、無神経すぎた」
「ううん!大丈夫!…尾白くんなら、いいよ?」
「え」


恥じらいを見せながらも上目遣いでこちらを伺う彼女を俺はどうしたらいいのだろうか。
その言葉と行動をたしなめる?それともいっそ抱きしめてしまおうか?
考えながらもつい手が先に彼女に向かいそうで叱咤する


「(冷静になれ俺!)…ミョウジさん、それはどういう意味?」
「え、んと、尾白くんになら…私の大事なトコロ触られても……あ、」
「え?」


あと一歩で彼女の本心を聞ける(そしたら本人了承済みで色々しても大丈夫なはずだ)と言ったところで止まってしまう


「もしかして…尾白くんもそうなの?」
「…なにが?」
「私、毎日尾白くんの大事なトコロいじくり回してたの!?」
「ええ!?」


感情が高ぶっているのか、彼女の声が先程よりも大きくなる
それに連れて周りのクラスメイトの目も集まってくる
ヤバイ、このままでは要らぬ誤解を受ける!


「ごめんね尾白くん!いつも我慢してたんだね!私知らずに尾白くんの大事なトコロを!」
「あの、ミョウジさん声が大きいし、言い方おかしいから」
「尾白くんの敏感なところを!あろうことか人前で!」
「ミョウジさん!?聞いてる!?」
「公の場で!尾白くんの尾白くんを!!」
「…ミョウジさん、それわざと言ってるでしょ」
「…ばれた?えへへ」


また八重歯を見せて笑う彼女
その頬の赤みは照れ隠しなのか、それとも俺への挑発か



尾白猿夫の多難
今日もため息一つで許してしまう

ご提供ネタ:猫耳ヒロインと尾白くん


△ヒロアカ短編へ戻る

△TOPへ戻る