「痛くない?」
「全然!つったら嘘になるな、まぁこんくらい大したことねぇよ!」
「切島、避けることも覚えなね」
「男なら真正面から受けてえだろ!」


演習でいつも正々堂々と戦う切島は生傷が絶えない。
一つ一つは大したこと無いけれど、こう傷が絶えないと見てるこっちが痛々しく感じてしまう


「だとしても!見てるこっちはハラハラするんだから」
「…ワリィ」
「あんまり反省してないでしょ」
「バレたか」
「顔がニヤついてるよ!」


リカバリーガールに診てもらう程ではない傷を手当するのは大体私の役目。
いつだったか、持ち歩いてる絆創膏を彼に貼ってあげてから怪我する度に私の所に来るようになった。
お陰で鞄の中には彼の手当用の救急キットが常備されることになった
まぁ、他の子とかのとこに行くよりいいんだけど。


「ミョウジ、いつもサンキューな」
「ん、なに今更…」
「何だかんだで毎度世話になってるしな!」
「毎度怪我しないで欲しいんですけど」


こうして切島と一緒に入れるのは嬉しい
嬉しいんだけど…やっぱり心配のほうが勝っちゃう。
いつか、笑って済ませられない大怪我するんじゃないかって、考えただけで胸がぎゅって痛くなる。
彼の個性の強さは理解してるけど、それでもやっぱり怖いじゃない。


「…俺さ、ミョウジがいっから安心しちまうんだろうな」
「え?」
「怪我してもよ、ミョウジが診てくれるだろ。…お説教付きで!」
「ちょっと!」
「でもよ、誰かが心配してくれるのって結構嬉しいもんなんだよな!なんつーか、帰ってきたってわけじゃねーけど、あー!終わったー!って一息つけるんだよな!!」


いつものように大口開けて笑う切島
頬も怪我してるから痛いだろうに、そんなこと感じさせないような笑顔が眩しい


「私はお母さんじゃないよ?」
「わーってるって!そんなんじゃ無くてだな!えっと、その……いや、なんでもねえ」
「どうしたの?ほら、次手ぇだして」


いつになく歯切れの悪い返しが気になるけれど、今は傷の手当が先。
出された手も擦り傷だらけでこっちが苦笑いしちゃうほど


「一生懸命戦うのはいい事だけどさ、やっぱり心配だよ」
「…おう」


傷だらけで固くて大きな彼の掌
これから沢山の人を守って、今まで以上に傷だらけになる優しい手をそっと撫でる。


「ヒーロー目指してる以上、怪我しないで、なんて言わないけどさ…ちゃんと戻ってきて」
「!」
「何度だって手当するから、お説教もいっぱいしてあげるから、絶対に帰ってきてね!」
「…おう!当たり前だろ!!」


撫でていた手をグッと掴まれる。
少し痛いけど、彼の体温が心地よくてずっと離さないで欲しいと思えてしまう。


「どんな強敵と戦ってもぜってーミョウジのとこに帰ってくるかんな!」
「なら、私はいっぱいいーっぱいお説教する準備しているね!」
「そっち!!?」


私もぎゅっと力を込めて彼の手を包む
ほんの少しでもいい、私のこの思い彼に伝われ

大好きな彼が、ずっと笑顔でいてくれますように
優しい彼が、ヒーローになっても無事でいてくれますように…



「見ろよ峰田、あいつらを」
「ああ、嫌でも視界に入るぜ上鳴よぉ」
「あいつらあれで付き合ってねえんだぜ?」
「どうみても夫婦の会話じゃねえか」



切島鋭児郎との約束
「「…リア充爆発しろぉい」」

リクエスト:切島


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