「物間の首ってなんかエロいよね」
「えぇ…、女の子にそんな風に言われるとは思ってなかったな。とりあえず、ありがとう?」
「あんまり嬉しそうじゃないね」
「喜んで欲しかったの?」
「いや、別に」
「…ミョウジはさ、クラスメイトにエロいねって言われてどう思う?」


物間は論破グセでもあるのか、話しだすと止まらない時がある。
そういう時に生返事をすると、とてつもなく長い嫌味を聞かされるハメになるのでオススメしない。
まぁ、でも言ってることは結構正論に近しいものがあるので聞いてて飽きることはない。


「んん、その人によるけど、何言ってんだこいつって思うね。…なんかゴメン」
「別に謝って欲しいワケじゃないよ。ミョウジが言った通り人によっては嫌悪感を感じるかも知れないけど、幸いミョウジにはそう感じなかったからね」
「ん、そう、なら良かった」
「…それだけ?」
「え?」
「いや、なんでも」


物間の表情は同年代の子と比べると、少し乏しいのかもしれない。
かと言って無表情というワケではなく、いつもその顔は何処か穏やかで、彼をよく知らない人から見れば物間という人はとても良識ある人物だと受け取るだろう。
実際は…まぁ、悪い人ではないけど善人でもない。
気に入らない相手を真綿に包んで罵るなんてザラだ。つい最近も隣のクラスの爆豪という生徒と廊下で言い合ってたぐらいだ。

言いたいことは言う。そんなポリシーさえ感じ取れそうな彼も、時どきこうして言葉を濁すことがある。
大抵は私が彼の真意を受け取れず聞き返すが、その後まともな返答を貰えた試しはない。


「言っていいよ」
「…なにが?」
「物間が思ってる事言いなよ、大抵の事なら受け入れる自信、あるよ」
「……君は時どき怖いことを言うね」
「そう?」
「………この年代、というか、男全般に言えることだけどさ、」


一度目を逸らした後、どこか居心地悪そうに言葉を続ける物間
左手を私が評した首筋にあて、さする。何でもない行動なのに、妙にドキッとしてしまう。うーんやっぱり色っぽいと思うなあ。


「異性にそういう評価を貰うとさ、意識しちゃうんだよね。自分の事そういう対象として見てるのかなって」
「そういう対象?」
「うん、言っちゃえば性的対象として見てるのかなって。…ミョウジ、僕とそういうことしたいのかなーって、思っちゃうんだよ」
「!」
「もちろんその考えを鵜呑みにはしないよ。君がそういう意味で言ったんじゃないって分かってる。…それでもさ、意識しちゃうだろ。だからさ、男にあんまりそういう事言わないほうがいいよ。頭の悪いヤツだと何するか分からないからね」


「…あながち、間違ってないかもね」
「は?」
「自分が意識してないだけで、私、物間の事そういう目で見てるのかもね」
「……ミョウジ、自分が何言ってるか分かってる?」


彼の眼の色が変わる。色素ではなく、何というか、逃げられないと思わせるようなもの。
元より逃げる気はないケド

手が降りて今はむき出しの彼の首筋にそっと手を伸ばす。
前髪と違って短く切られた後ろ髪に指を這わす。思ったよりも柔らかい髪の感触がクセになりそう

じっとこちらの様子を伺っている彼を尻目に、そのまま頭を撫で付ける。
ツッと彼の顔に手を這わす前に手を取られた。
少し強めに握られて痛い。


「確かめて、みる?」
「…ミョウジから挑発される日が来るとは思わなかったな」



物間寧人の主張
その挑発、乗ってあげるよ


△ヒロアカ短編へ戻る

△TOPへ戻る