きっかけはあまりよろしくないものだった。
当事者の私でさえドン引きするレベル。

雄英に入って初めての中間テスト、その合計点数を友人たちと競って負けた。
そんな事は周りの子たちもしていたし、普通なら次頑張ればいいで終わる。でも、私たちの場合は違う…


「ふふふ!楽しい罰ゲームタイムでーす!」
「くそ、無駄にテンション上げちゃって…!」


ただ勝負するだけでは面白くないの一言でそれは始まった。
元々偏差値の高い雄英である、テストの結果なんて僅差でしかないことは最初からわかっていた。でもそれでは緊張感がない…やはり勝負事にはリターンかリスクのどちらかが必要だ!
ならば……罰ゲームだ!!という流れでしょうもない事になってしまった。
今思うとなぜ乗ってしまったのだろうか…


「…で、何するの?お菓子でも奢ればいい?」
「ノンノン!そんなもんじゃ盛り上がらないって!!」
「(盛り上げんでいいわ)じゃ、どうするの?」
「高校生と言ったら思春期よね!恋愛ごとに興味が湧くのは至極当然のこと…」
「(…嫌な予感しかしない)」
「ってことで!ヒーロー科の男子に告白しちゃいましょーー!」

「…はぁああああ!?」


罰ゲームで告白とか意味わかんない!相手の人にも迷惑だ!


「それ、相手にも悪いじゃん!関係ない人巻き込むとかヤダよ!」
「大丈夫だーって!ヒーロー科だよ?超エリートだよ?そんな人達がウチら普通科を相手にするわけないじゃん!どうせ断られるって!」
「なにそれ私今貶された?ねぇ?」
「どうせなら話題のA組にしようよ!」
「え?無視?ねぇ、私の意見はスルーなの!?」
「じゃ、じゃ、じゃ!A組でも有名な子にしようよ!!ほら体育祭で目立ってた人とか!」
「ちょっと!せめて相手は私に選ばせてよ!!」


友人たちガンスルーである。
おかしい、人権ってなんだ!


「じゃ、決まり!ナマエ!!」
「…はい」
「今回の罰ゲームとして、A組の上鳴電気に告白して来なさい!」
「…拒否権は」
「ない!!!」
「デスヨネー」


ああ、巻き込んでごめんなさい話したこともない上鳴くん、全てはこの悪ノリした友人たちのせいです!

そんなこんなで別の日の放課後、友人の1人が上鳴くんを呼び出すことに成功し、誰もいない教室まで用意してくれた。
罰ゲームで周りの方が全力で働くってどういうことなの…


「えっと、…話あるって聞いたんだけど」
「あ、うん、いきなりごめんね?」
「いや、…えっと、初めまして…だよな?」


放課後の誰もいない教室に異性の生徒を呼び出すなんて、やることは一つだ。
上鳴くんも大体分かってるんだろうから、そんなソワソワしないで欲しい、こっちまで落ち着かなくなる…


「(まぁどうせ断られるし、ちゃっちゃと終わらせちゃいましょう)私の事知らないと思うけど、私、上鳴くんの事好きなの。もし良ければ付き合ってください!」
「!」


よし、ちゃんと噛まずに言えた!
あとは彼がお断りすれば罰ゲーム終了だ!
来る解放感の期待を胸に彼の返事を待つ


「(どーんとお断りしちゃて!)」
「あ、えっと、その…」
「(男だろ!ヒーロー科だろ!?ビシッとバシッと言ってちょうだい!)」
「……俺でよければ」

「へっ?」
「名前聞いていい?」
「え、あ、ミョウジナマエ…デス」
「ナマエね、今連絡先交換できる?」
「う、うん…うん?」


おかしい、おかしい!!
この流れは想定外だ!!


「ちょっと待って!」
「え?」
「私普通科だよ!?わかってる!?」
「それは知らなかったけど、普通科とかそういうの関係なくね?」
「なっ……!」


予想外だ…咄嗟のことでドア付近にいる友人たちに顔を向けると、揃いも揃って親指立てて「いいね!」していた。
良くない、何も良くないから!あんたら面白がってないでなんとかしてよ!


「とりあえずさ、飯でも行かね?ゆっくり2人で話そうぜ!」
「あー、えっとぉ」
「これからお互い色んな事知っていこうな!とりあえず、何好きなん?」


なんだかとってもいたたまれない気分になってきた…!
だって上鳴くん、凄い目ぇ輝せてるんだもん!きっと純粋な人なんだ…


「んと、オムライス…かな?」
「まじ?俺も好き!じゃ、駅前の店行こうぜ!帰りは送ってく!」
「…ありがと、う(あああああ、私のバカバカバカ!!)」



その後、自分だけ内心気不味いままご飯を食べ、在ろう事か手を繋いで送ってってもらった。
明日、明日になったら本当の事言おう!絶対に…!!


そう決意した。
だが、その次の日…

「ナマエヤバいって!ナマエが上鳴くんと付き合ってるって学校中に広まってるよ!」
「うぇぃ!?なんで!?」
「上鳴くん本人が言いまくってるらしいよ。可愛い彼女が出来たって、クラスで彼女作ったの一番最初だから喜んじゃったみたいね」
「アホじゃないのあいつ!」
「ナマエ、頑張りなさい!」
「責任とれよー」
「嘘から出た誠って言葉もあるぐらいだからね!なんとかなるさ!」
「あんたら楽しんでるだけっしょ!?」
「ナマエー!」


噂をすればなんとやら、上鳴くんがうちのクラスの出入口に来ていた!
やめて!ヒーロー科の生徒って居るだけでも目立つのに名前とか大声で呼ばないでよ!


「クラスの奴がよ、俺に彼女できたって信用しねーんだ!ワリィけど一緒来てくんね?」
「えええ!?」
「ドウゾドウゾ」
「うちのナマエを末永くよろしくお願いしますね」
「あんたらっ!!」
「任せろ!何があってもナマエを守り抜いてみせるぜ!!」
「っ!」


ああ、この人優しいけど残念な人なんだな…
握られた手にぎゅと力を込めて一緒に彼の教室へと向かう

まあ、アレだね、きっかけは色々あるもんね。もしかしたら本当に好きになるかもしれないよね、



「うわあああああ!上鳴が本当に彼女連れてキタアアアアア!!」
「どうだ峰田!可愛い子だろう!!お前らも悪いな!早く彼女作れよ!!」
「チクショウ!調子のりやがって!アホのくせに!アホのクセに!!」
「俺は普段はアホじゃない!」
「(なにこれヒーロー科ってこんなんなの?)」



上鳴電気の彼女(仮)
好きになるかは、まだこれから


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