「は、え?なにこれ…」

朝、アラームとともに起きて普段と同じように洗面所へ。
髪をヘアバンドで留め、寒さに耐えながら顔を洗う、そこまでは問題ない。
横に置いておいたタオルで水気を取って顔を上げた瞬間、違和感が…

「(あれ、今日寝癖ヒドイ…髪の毛生乾きだったかな?)」

いつも以上に髪のボリュームが凄い、そう思って頭を押さえつけた時、違和感は確信へと変わる


「え?え?え?は??…い、痛っ」


頭を触ると普段感じない感触が首筋まで走る。ゾワゾワっていうか、もぞもぞというか…
押しても引っ込まない、撫で付けても元に戻る、ならばと引っ張ってみるとまさかの痛み。これは…


「猫耳…だ…と!?誰得!いやってかどういうこと!」


一瞬にして頭の中がパニックになる
いやちょっとわりとマジで理解できない!どうなってんの!??






「どういうことだと思う!?百ちゃん!!」
「私に言われましても…」
「私の中で一番の博識なのは百ちゃんなの!これどうしよう、変な病気だったりしたら…!」
「落ち着いてくださいナマエさん、他に体に異常はありませんこと?」


とりあえず1人じゃ何も解決しないことだけは分かったので、さっさと学校に行って他の知恵を借りようと思った。


「(この状況全てが異常だと思う)……しいて言えば、」
「しいて言えば?」
「尻尾も…ある…」
「…あら、まぁ」


朝起きて耳生えてパニック状態になりながらも登校の準備をしていた時に気づいた。…尻尾もあることに。
しかも触ってみると耳以上にゾワゾワするし、服を着ると邪魔だし…
尾白くんいつも大変だったんだな、これは専用の服が必要だわ、と変に納得してしまった。


「先ほどまでは見えませんでしたが、収納できるんですの?」
「収納ってか、……ふ、太腿に絡めてた」
「……峰田さんにはお知らせしたくない事ですわね」
「ご理解いただき幸いです」


まさか今後のことも考えずにスカートに穴を開けるわけにもいかないので、とりあえずパッと見分からない程度に隠している。


「ですか、個性でもないのに動物の部位が出てくるなんて…」
「怖いよね!めっちゃ怖いよね!?ど、どうしよう…一生このままだったら…」
「まずは首輪でしょうか?」
「…え?」


百ちゃんから不吉なワードが聞こえた。え?なんだって?


「私はリボンでも可愛いと思いますの」
「いや、百ちゃん?どうしたの?」
「お洋服は私が創造いたしますわ」
「…百ちゃーん?おーい?」
「はい、ナマエさん、ねこじゃらし」
「わーい!…じゃなくて!なに!?どうしちゃったの!?」


普段の彼女からは想像できないほどに活き活きしている。もしかしてネコ派?


「百ちゃんってネコ派だったんだね」
「いいえ、私はナマエ派ですわ」
「何言ってんのかわかんない」
「奇遇だな、俺もナマエ派だ」
「!と、轟くん、…おはよう」
「ああ、おはよう」


百ちゃんと話しているといきなり後ろから轟くんに話しかけられた。
そういえば席、百ちゃんの隣だったね…


「今日ずいぶんゆっくりだったね、寝坊?」
「いや、急な用事ができてな」
「朝から大変だね」
「ああ、これを買いにな」


そう言って鞄から出てきたのは、細長い革製の…


「なんで朝から首輪が必要なんですかねえ、しかも学校で」
「八百万から連絡が入ってな。ナマエが猫化したってな」
「迅速な情報共有はヒーローの基本ですわ」
「よくやった八百万」
「よくない、プライバシーって大切!あと話しながら首輪つけようとしないで!」


しれっと髪をかき分けて首輪を付けてこようとする轟くん。
咄嗟に身を引いて回避したけど、一瞬彼の舌打ちが聞こえたような気がしないでもない。
うん、気のせいだよね


「動くな、…怖くねえ怖くねえ」
「ちょ!首元くすぐらないで!」
「鈴付きの首輪なんていいご趣味ですわ、轟さん」
「調教は俺がやる」
「せめて躾と言え。ってか猫扱いしないで!私人間だから!!」


相変わらず首元らへんをくすぐってくる轟くんの手を抑えながら講義する。
なにがなんでも私の人権は死守するぞ


「…人間の耳も残ってんだな」
「あ、そういえば」

そう言って私の耳と猫耳、両方の感触を確かめるように弄ぶ。
なんかっ!手つきが!


「んん、なんかヤダ!」
「どっちの耳が感じる?」
「轟さん、秘め事は場所を選んでくださいね。皆さんの注目の的ですわ」


見渡すと、クラスメイトの視線が痛いほどこっちに集中していた。
見てるくらいなら助けろよ


「ナマエちゃん!その耳!」
「お茶子ちゃーん助けて!」
「可愛いね!」
「人事って怖い!!」


ダメだ!こいつら完全人事として割り切って見てやがる!


「んだこの耳、フザケてんのかてめぇ」
「痛い!爆豪くん引っ張らないで痛いから!!」
「おい、触んな。変な虫が付くだろう」
「ああ?何様だオメェ」
「轟くん首輪付けないで!」

「なぁミョウジ、これ、尻尾か?太腿に絡めるとかエロいな!」
「!」


轟くんと爆豪くんの2人と攻防戦をしていると足元から声がした。
安定の峰田だ
百ちゃんに見せた後、スグに仕舞った尻尾の存在に気づかれた…こいついつも余計なことを!


「アァ?尻尾もあんのか、見せろ」
「ヤダよ!」
「…これか」
「ちょおおお!」


事も無げにスカートの中に手を突っ込んで尻尾の在処を探す轟くん。
君はバカか!?


「やめえええ!」
「おいムッツリ野郎!手ぇどけろや!」
「爆豪くんも耳で遊ぶのやめええ!」

「…ナマエ、二つに一つだ。このまま俺に身を託すか、大人しく尻尾を見せるか」
「お前ら学校をなんだと思ってるんだ!」
「そ、そうだぞ君たち!破廉恥な行動は慎み給え!ここは神聖なる教育の場だぞ!!」


この声はA組の良心、飯田委員長!!
やっと救いの手が現れた!


「たすけて飯田く…」
「動物虐待は良くない!今すぐ止めよう!!」
「委員長!あんた今日一番の動物扱いだよ!!」
「これが…ケモナーってやつか…エロくて最高!」
「峰田ぁあんた覚えてろよぉお」

「何の騒ぎだ、お前らさっさと席につけ」


そうこうしているうちに相澤先生が来てしまった。
何の解決方法も見つからないどころか、とんだ目に会った…


「…ミョウジ、お前それ」
「先生、仰りたいことはわかります。私もこんなフザけた格好好きでしてる訳では…」
「いいんじゃないか」
「え」
「目の保養、朝から疲れを癒やすのは合理的だ」
「担任了承ですわナマエさん。おめでとうございます」
「調教は俺がする」
「轟、朝から絶好調だな、オイラなんか怖いぞ」
「何もかもが解せない」



その後、轟くんに尻尾でセクシャルハラスメントされたり、爆豪くんにひたすらねこじゃらしでくすぐられたり、噂を聞きつけたB組の物間くんが散々煽った挙句、髪の毛モシャモシャにされたり
とにかく散々な目にあった。
次の日になったら跡形もなく消えていて本当にほっとした。

結局、原因はサポート科の生徒が自主制作で作った薬品を発目ちゃんが持ち出したことにあったらしく、後日彼女からネタばらしとともに謝罪のベイビィ(GPS機能付き首輪)を渡された。


「いやー、本当は緑谷さんに飲んでもらいたいと思ったんですけどね。あの日見当たらなかったので、その場にいたミョウジさんに飲んで貰ったんです。どうでした!?私のドッカワイイベイビィほどじゃないけど中々の代物だと思うんですけど!!猫耳生えた感想と具体的な意見をですね…」
「うん、とりあえず殴っていいかな?」



にゃんにゃんにゃんの日
どうせなら爪と牙も生えれば良かったものを!


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