※堀越先生Twitter画像派生バレンタイン話です。


2月、冷たいが風が身にしみる季節。僕が雄英に入学してもうすぐ一年が経とうとしている。色々あったなぁ。去年の今頃はオールマイトと雄英入学に向けての特訓の大詰めしてたっけ。あれからもう一年経つんだなぁ…


「あれ、LINEきてる…」

日課のジョギングから帰って携帯を確認したら何件か通知が来ていた。
慣れた手つきでアプリを立ち上げると、どうやらA組のグループLINEが盛り上がってるようだった。


「みんな、どうしたんだろ…うぇっ!!?」

事の発端はミョウジさんが送った写真とメッセージにあった。


『みんなワカメは好きかい?』のメッセージの後に投稿された画像は、クラスの女子が集まって何かを作っている写真。
時期的に恐らくバレンタインのチョコを作っているんだろう。
皆、やさしいな…僕も貰えるんだろうか、とほんのり期待を持ったが、スグにメッセージ内容と画像の噛み合わなさに疑問が生まれる。


「ワカメ…って海藻の?バレンタインに関係あったっけ?」

もう一度よく写真を確認する。見慣れたクラスメイトの女子達の私服姿が新鮮でドキドキしてしまう。

「(ここ麗日さん家かな?みんなオシャレだなあ…)」

テーブルの上には試行錯誤した後の黒い塊達…チョコ…なんだろうか?その物質にいささか不安がよぎるが、一生懸命作ってくれたのなら喜んで食べよう!そう思っている時に衝撃の事実に気付いた。
写真の左側、普段と同じように髪を高く結った八百万さんが難しそうな顔をして右手に持つものを凝視している。
その彼女が手にしているものは

「え…わ、わかめ?」

味噌汁でも作るのだろうか?いやそんな、テーブルには恐らくこれから手を加えるだろう湯煎されたチョコレートがボールに入っている。チョコ作りはまだ終わっていないのだ。
ということは……


「チョコとワカメ…?ワカメチョコ?……しょっぱい、いや甘い…?ん?ん?」

あまりの衝撃に考えがまとまらない、もっと情報が欲しくてLINEを確認すると他のクラスメイト達が大騒ぎしているようだった。


『ウェ〜イ!チョコだ!やったぜ!!八百万はなんでわかめ持ってんだ!?』
『嬉しいけどわかめは止めようよ』
『スイーツにスマートじゃないものはいれないでね☆』
『ポニテ女がポンコツしてんぞ誰か止めろ』
『麗日の太腿!』
『テーブルの上も不安しかないぞ!大丈夫かコレ!』
『解せん』
『俺たちなんかしたか!?オイ心当たりあるヤツ出てこいよ!!!』
『ミョウジ、お前だけが頼りだ。止めろ』


あのかっちゃんや轟くんでさえ不安がっている。そりゃそうだよな…わかめ入りのチョコか、僕は耐えられるだろうか…
お腹の辺りを押さえて来る日に備えようと諦めかけた時、またミョウジさんからメッセージが上がった


『みんなすまない!私は彼女たちの楽しさいっぱいの実験を止められない!!これも試練だPlus Ultra!!』
『ふざけんなオメーが食え』
『ミョウジ!諦めるな!』
『実験って言ったぞ!言い切ったぞ!!』
『芦戸の私服エロいサイコー!』
『リカバリーガールって予約できたっけ?』
『この上ババァの口付けとか死ぬぞ』
『悪いが燃やすぞ』
『焼却は可哀想だろ!オレは食うぞ!それが男の責任だ!』
『なんとかB組に横流しできぬものか。策を練ろう』


皆、だいぶ焦っているようだ。僕も今から出来るだけ策を練ろう…一番効く胃腸薬ってなんだったかな…


『チョコが足りないからジロちゃんと透ちゃんは買い出し中だよー!みんなどんな形がいい?』
『形じゃなくて中身のリクエストを受け付けてくれ!!』
『食べ物を粗末にするのは良くない!今すぐ止めよう!!』
『チョコって電流流したらなんか別のものになったりしねぇ?教えて偉い人』
『テーブルの上を見る限り、リクエストしても無事反映されるとは思えない』
『オレは食わねーからな』
『とりあず食うから!頼むから入れるのは食べれるものにしてくれよな!!』


もうこれダメなやつだ!





そして試練の日。
今年は14日は土曜日で休みだからと、前日の13日にそれは僕達に振る舞われた。
ラッピング、可愛いな、…中身も可愛いと良かったんだけど


「はいこれデクくんの分!ちょっとカタチ崩れたけど、ちゃんと固まったよ!」
「あっああああありがとうっ!」
「こっちは飯田くんの!」
「あ、ああ、ありがとう」


みんな女子に手渡されたモノを凝視して動かない。
かっちゃんでさえ戸惑っている。


「みんなヒーロー志望だから歯と顎頑丈だよね?」
「やめろミョウジ、これ以上不安を煽るな」


ミョウジさんに手渡された轟くんがみんなの心情を代弁する。硬さか…切島くんだったら乗りきれるだろうな


「轟くん、燃やさないでね?」
「………善処する」
「爆豪くんも爆破はやめてね。みんな一生懸命作ったんだよ?」
「うるせー余計なお世話だ」

流石というか、この流れを読んでいたのかミョウジさんがその場で処理しそうな2人に釘を刺している。
確かにどんなダークマターでも麗日さん達が一生懸命作ってくれたものだ!時間を掛けてでもちゃんと食べるぞ!!


「感想ききたいから、デクくん今食べて!」
「ヘァッ!!?」
「(麗日くん!それは死刑宣告だ!)」
「今後の参考にいたしますので、是非ともご意見を」

八百万さんまで…!僕はもう、ここまでなのか…ヒーローに成りたかった……
他のクラスメイトが固唾を呑んで僕を見守る。これも、試練…!
恐る恐る淡い色の袋に手をかけると、綺麗に詰められたチョコレート(っぽいもの)が姿を見せる。
コロコロと丸く加工されたチョコは確かに少しいびつだけど、大きさは思ったよりも小柄で可愛らしかった。


「(色は…普通だ。匂いも。)んぐ……あれ?普通のチョコだ」
「あはは!ビックリした?大成功だー!」

目の前にはドッキリ成功とも言いたげな麗日さんが楽しそうに笑っている。口の中が甘い。
すこしザラつきはあるものの、普通の手作りのチョコだ
失礼かもしれないけど、驚いてミョウジさんの顔を見る。どういうこと!?


「私、ワカメ入れたなんて一言もいってないよ?」
「えええええええっ!!?で、でも止められなかったって…」
「途中から百ちゃんが使い慣れた用具で作りたいってビーカーやら創造してね、ちゃんと調理用のがいいよって言ったんだけど…」
「正確な量を測るには正確な器具を使用しなくては!栄養面を考えてトッピングを提案しましたがナマエさんに却下されましたわ」
「オイラミョウジ見直したわ。ミョウジまじ有能」


なんかザラついてたのは器具の問題だったのか…
でも、本当に良かった…鞄に仕込んだ胃腸薬を使わなくてすんだことにホッとする。


「で、どうだったんデクくん!お味の方は!」
「うん、すごく美味しいよ!ありがとう麗日さん!」
「デクくんにはいつもお世話になってるからね!みんなも!」
「ありがとう麗日くん!そしてミョウジくんの判断にブラボー!!」
「普通にあげるのもつまらないからね、みんなドキドキしたでしょ?」
「嫌なドキドキだったぜ!でもサンキューな!お返し期待しといてくれ!」


みんな各々にお礼を言ってチョコを食べ始める。
教室中が甘い匂いに包まれる。なんかすっごくバレンタインって感じだ!!






わかめドッキリ作戦も無事成功して女子も男子も大満足!
実際作ってる時は失敗ばかりでどうなるかハラハラしたけど、なんとか上手くいってよかった。


「ミョウジも作ったのか?」
「もちろん、ってか轟くんが食べてるのは私が作ったやつだよ」
「!」

チョコを頬張りながら聞いてくる轟くん。なんかほっぺたもぐもぐしてて可愛いな


「…ミョウジだけが作ったのか?」
「うん、そうだよ」
「オレのだけを?」

なにか気になることがあったのか、疑問を投げかけてくる彼。なんだろ、お気に召さなかったかな?


「だけって言うか、私ビター担当だから」
「………担当?」
「うん、事前に透ちゃんとジロちゃんがみんなの好み調べてくれてね、甘いのが苦手な男子にはビターチョコのをあげてるの」
「……オレだけじゃないのか」
「え?うん、爆豪くんとかもビターだよ。…もしかして美味しくなかった?ごめんね?」

一応味見はしたんだけどな、やっぱり男子と女子じゃ味覚が違うのかな。うーん、これは来年に向けて要検証だな。


「違う。美味かった。」
「あ、そう?なら良かった」
「……来年はオレのだけ作れ」
「え?」
「爆豪とか他のやつのは作らなくていい」
「聞こえてんぞこの半分野郎がぁ!!」
「おい爆豪無闇に爆破すんなよ!俺のチョコ吹っ飛んだだろ!!」


後ろで爆豪くんの怒声と切島くんの可哀想な声が聞こえる。切島くんドンマイ…


「お前いらねえっつっただろ」
「いつの話してんだこの野郎!」


爆豪くんが轟くんの胸ぐらを掴み上げる。ああ、ヤバイ…巻き込まれそう!


「ミョウジさんたちがチョコを振る舞ってくれると聞いて来てあげたよ」
「A組女子は気前いいな!最高だ!」
「私達にも友チョコちょうだいー!」

クラスの入口付近でB組も集まってくる、誰だ話を膨らましたの!
とうとう爆豪くんがブチ切れたのか、爆破の威力が上がってきた。それに応戦する轟くんが教室中を氷結させまくる。


「ああ、なんてカオス」
「来年も作ろうね!ナマエちゃん!!」



ああバレンタインって怖い
絶対相澤先生に怒られるな

拍手リクエスト:テレポ少女でバレンタインギャグ、轟落ち。落ちてなくてスミマセン


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