「こんにちは、ミョウジさん」
「えっ、こ、こんにちは…」

えーと…どなた様でしょうか?

「はは、誰?って顔してるね」
「えっ、いやぁ、…どこかでお会いしました?」
「うーん、会ってるかもしれないし、会ってないかもしれないね」


なんだ、こいつ。
週末、ヒーロー基礎学も終わって帰ろうとした時の事だった。
明日から休みだからのんびりしよーってウキウキで帰ろうとしたらコレである。
私を囲む同い年ぐらいの雄英の制服を着た生徒4人。
代表者なのか、薄い髪色のツーブロックの垂れ目な人がさっきから話しかけている。
状況だけでもちょっと警戒しちゃうのに、言ってることまでわけわかんないと怪しい人たち決定である。


「ふざけてるんですか?あの、私帰るんで…」
「そんな怒んないでよ、ちょっとした冗談じゃん。…本当に見覚えもないんだね、まぁA組の人達は僕たちのことなんて眼中にもないんだろうね?」
「え…」
「僕は1-Bの物間。こいつらもみんな同じヒーロー科のB組だよ。知らなかったよね?でも、僕たちはミョウジさんのこと知ってたよ?だってあの有名な1-Aの生徒なんだから。知ってて当然だよね?まぁミョウジさんに限ってはいろんな意味で有名なんだけどさ。そうそう、今回はその話をしに来たんだ。きっと君は知らないだろうから親切心からの忠告とお願いをしにね。もちろん聞いてくれるよね?ミョウジナマエさん?」
「えっ、ちょっと…」


急に一気に話されてイマイチよく状況把握出来ない。えっと、この人達は同じヒーロー科のB組の人達で、向こうは何でか私のこと知ってて、忠告とお願いを…

忠告とお願い…?


「とりあえず、ここではなんだから一緒に来てくれるかな?」
「…ここでは話せないようなことなの?」
「別に、構わないけどさ。それは君次第かな?コレの件なんだけど。」


そう言って彼が右手にあるスマートフォンを私に見せてきた。


「っ!!ちょっ!!なにコレ!!」
「これ、ミョウジさんでしょ?いやあ随分とセクシーなコスチュームだね」


画面に映っていたのは紛れも無いコスチューム姿の私。しかもなかなか際どいショットだ。なにコレ誰がいつ何の目的で撮った!?ってかなんで!


「なんで君が持ってんの!」
「わかっているとは思うけど、僕が撮ったわけじゃないよ?コスチュームを着るヒーロー基礎学の時間はA組とB組は別の演習場所にいるからね。今までだって合同実習なんて無かっただろ?」
「それは分かってる!だから、誰が撮ってなんで君がそれを持ってるのかって聞いてるの!」


写真の至近距離からして相当近くじゃないと撮れないハズ…。
ってことはうちのクラスの誰か?…いやでも演習中にそんな怪しいことしてたら即効でバレる。それにクラスメイトを疑うようなことは…怪しいのはいるけど。


「(可能性があるのは…峰田か峰田か峰田…でも盗撮なんて技術ある?)」
「その辺踏まえてお話ししたいんだよね。とりあえず来てくれるかな?」
「………わかった」


確証がないならこれ以上考えても仕方がない。この人達が何かしら知っているのだとしたら話を聞いた方が早いだろう。
そう思って付いて行くことにした。




「…よくこんな場所知ってたね。」
「そう?結構メジャーじゃない?」


言われて付いてきた先は社会科講義準備室。なんで鍵空いてるのかはこの際見なかったことにしてあげよう。


「で、なんなのさっきの写真は出処は!?」
「早速だね。まあいいか。出処は僕も正確には知らないんだ。ただ、雄英はこういうのが伝統的にあるみたいだね」
「は?学校公認の盗撮ってわけ?」
「そうじゃないさ。んー、なんて言ったらいいのかな?ヒーローって人気商売だろ?それは学生の時から始まっててさ。人気のある人だとこうやって写真とか売られるわけ。本人の承諾がないのは良くないけど、一応宣伝の一種…なのかな?だから全部が全部悪いってわけじゃないんだよね。実際女子だけじゃなくて男子生徒の写真も出回ってるし。」


この人喋り出すと長い…でもなんとなく読めてきた


「つまり、この写真の出処は不明でも存在は知っておいたほうがいいと。ついでに今後周りのことは注意しといた方がいいってことね。いつどこで撮られるかわからないから」
「理解が早くて助かるよ。流石A組だな」

この人さっきからA組A組って嫌に突っかかってくるな…別にA組もB組も変わらないじゃないの

「っていうかさっき、売るって言ってなかった?」
「言ったね」
「…まさか君もその写真買ったの?」
「もちろん」
「(うわあバカじゃないの)うわあバカじゃないの」
「凄い、心の声ダダ漏れだね。因みにこの高画質のやつで1,000円、小さいやつだと500円だよ」
「はああ!?ちょっとマジアホなんじゃない!?こんな写真で1,000円とかお小遣いの何分の1よ!高校生の貴重な小遣いバカなことに使ってんじゃないよ!もっと計画的な買い物しろや!」


はっ、つい本音が…いやだっておかしいでしょ?だいたいそのお金どこいってんの。私に少しぐらい還元されてもいいんじゃないの?
っていうか、この分だと確実に他の女子も撮られてるな。百ちゃんとかとんでもない値段で取引されてそうだな…透ちゃんとかある意味プレミア付きそう!
くそう、なんとか生産者側に回れないものか!私も一儲け出来ぬものなのか、ぬぐぐ!


「ミョウジさんって時々口悪くなるって本当なんだね。ギャップ?」
「日本語は正しく使おうか」
「因みにこいつらも全員ミョウジさんの買ってるよ?多分A組でも買ってる奴いるんじゃない?」
「うわあ、見事な金ヅルになってんじゃーん引くわあ、やだあ」


さっきから物間くんの後ろに立ってるだけのモブっぽくなってる人たちもアホだった。肌が真っ黒な人に目がくりんくりんの人(あれ、私この人別の漫画で見た気がする)、あと黒髪イケメン(…ごめん特記する特徴ないわ)、この人たち来た意味あるの?無駄に私からマイナスイメージ受けただけだけど。


「そう言うなよ。男なんて皆そんなもんだって」
「一生理解したくない。…で、忠告は分かったけどお願いって何?」
「ああ、うん。…実はそっちが本題なんだ」
「(なっがい前置きだな)私にできることなの?」
「もちろん、ミョウジさんにしか出来ないことだよ」


彼が言うといきなり後ろの3人が動き出した。え、なに、

「え、ちょっと…」

3人が今度は私の背後に並び、両手を捕まれる。

「悪いな…」
「悪く思うな」
「あんまり抵抗すんなよ」
「(やばい)」

もう後ろの3人の言った言葉だけでヤバイこと始まるってわかっちゃったよ!酷い三下セリフを聞いちゃったよ!


「いい感じだねミョウジさん」
「いやいやいやいや、ね、おかしいでしょこの状況?大声出すよ!」
「どうぞ?この時間にこの辺通る人がいるといいね?」


あー、もう自分がバカすぎて嫌になる。よく知らない男子生徒が4人も揃って呼び出すとかロクなこと起きるわけないじゃん…
しかも後ろの奴らワザワザ制服捲って私の腕掴んでる。多分私の個性の事知ってるんだ。


「ミョウジさんの個性って“テレポート”でしょ?飛ぶ時誰かが触れてると、その人も一緒に飛んじゃうんだよね?いいなあ便利だね」
「……卑怯者」
「卑怯者なんて酷いな。これはお願いだよミョウジさん。」


物間くんが壊れ物を触る手つきで私の頬を撫でてくる。気持ち悪い。なんとか、なんとかしないと…


「A組の奴らはズルいよね」
「?」
「ミョウジさんの色んなとこ楽しめてさ。不公平じゃない?」
「私が何したっての…」
「何も?何もしてないから、これからするんだよ。ねえミョウジさん、僕たちも君で楽しませてよ」
「っ!」

気持ち悪い手が胸元に伸びた時だった



「いい加減にしろよ」

声とともに何かが割れる音がした。
音がした出入り口を見るといつの間にか人が立っていた…っていうかめっちゃ怒ってる、めっちゃ怒っていらっしゃる!
わかるよ!だって!!


「器物破損…」

出入り口付近が見事に氷漬けになってるし、扉に至ってはバリバリに割れちゃってますもん!さっきの音これか!!


「とっ轟くん!助けて!!これちょっとヤバイ状況なんです!!」
「わかってる、全員氷漬けにしてやる」


…え、それちょっと私入ってないよね?
その位置からの攻撃だと漏れなく私もカチコチなんですけど!ねぇ!顔!顔怖いよ!!この中で轟くんの顔が一番怖いよ!!!


「あれえ、思ったより早かったなあ。耐えきれなかったのかな?」
「……なんのことだ」
「最初っから付けてきたくせに。もっと早く助けることも出来たんじゃない?僕的にはもうちょっと遊んでからの方が盛り上がると思ったけど。…そうだな、彼女が泣き出した時ぐらい?」
「黙れ。そいつから離れろ」
「はっ、ナイト気取りかよ。うぜぇな。…それじゃあね、ミョウジさん。怖い思いさせてごめんね?でも君、これぐらいしないと警戒心持たないでしょ?」

「…え?」

えっ、なにどーゆこと?


「ミョウジさんって側から見てても色々無防備だからさ。同じヒーロー科として色々言わせて欲しかったのさ、まぁちょっと強引だったかもね。でも君みたいなタイプは実際に痛い目に合わないと実感しないだろ?だからこいつらにも協力してもらってさ…なかなかスリルあったでしょ?次からは男の誘いにホイホイ付いてっちゃダメだよ。僕たちとの約束ね」


はい、と拘束を解かれた手を掴まれてそのまま小指同士を絡められる。
懐かしい約束スタイルだ。これ破ったら針千本飲まされるんかな…


「えっと……あり、がとう、なのかな?」
「どういたしまして。お礼はまた今度でいいよ。そうだな、デートでもしようか」
「え?」
「おい」

「これ、僕の連絡先ね。こいつらのは僕から教えるから。それじゃあね。ミョウジさん。あ、あと写真の件は本当だから気をつけてね。」


そう言って物間くん達は出て行ってしまった。えっと、いい人たち…なんだよ、ね?なんかあっという間でわけわかんないけど…



「大丈夫か?」
「えっ?あ、轟くん、大丈夫だよ。何もされなかったし」
「…何もってわけじゃねえだろ」

私の手を取って手首を見る。
ああ、確かに少し跡が付いたかな。私も結構必死に抵抗したからな。


「もう片手も出せ。冷やす」
「この位、すぐ消えるよ」
「いいから」


物間くんが言っていたように、この時間は他に生徒が来ないのか、私たち以外の声が聞こえない。


「…つけてたって本当?」
「!、まあ…な」
「どうして?」
「…帰るときにたまたま見かけたんだ。…お前、危なっかしいんだよ。普通あの状況で付いていかないだろ」
「…ごめん、反省してます」

あの人達にも今度お礼言った方がいいのかな?乱暴だったけど、一応は忠告してくれたんだし。

「なんかあったら、俺に言え」
「え?」
「ああいう状況になったら俺を呼べ」
「…いいの?」
「何かあって手遅れになるよりマシだ」
「うん、ありがとう」

轟くん優しいな。誰にでもこうなのかな。やっぱりトップヒーローを目指す人は違うね!


「…帰るか、送ってく」
「ありがとう!…ところで轟くん」
「なんだ?」
「写真の件、知ってた?」
「……………」



B組物間の策略
轟くん怒らないから正直に言ってごらん


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