「さァ上げてけ鬨の声!!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙を上げる!!!!」
「と、盛り上がってるけどここでお知らせよぉ。A組の青山くんが体調不良のため今回の騎馬戦から棄権するわ。残念だけど、冷静な決断といえるわね。さ、そろそろタイムアップよ」
「よォーし組み終わったな!!?準備はいいかなんて聞かねえぞ!!いくぜ!!残虐バトルロワイヤルカウントダウン!!3!!!2!!1…!」
「ってな感じで始まったんやけど、その辺は覚えとらん?」
「全っ然、まっっったく!ヤバイめっちゃ怖い」
「ええぇ、じゃいつから覚えとるん!?」
「えっと…」
はっと意識が戻った時はもう騎馬戦は終わってた。
隣には私と同じような挙動の尾白くんと、B組の子。プレゼント・マイクの実況では私達が「心操チーム」であるかの様に(実際そうらしいけど)順位を告げていた。
気がついたら3位とか…これは素直に喜んでいいの?いやいいわけないっしょ!
「ううぅ、納得いかないよぉ」
「多分、心操くんっていう人の個性なんちゃう?」
「私、催眠とかかかりやすいのかなぁ…」
いくら知らなかったとはいえ、ちょっと簡単に引っかかりすぎな気がする!
悔しいなぁ、騎馬戦頑張りたかった…
「でも!ナマエちゃんめっちゃ活躍しとった!他のチームが近づく度にぴょーんて移動しとった!」
「あの野郎人の個性だからって乱雑に使いやがって!だからヤケに疲れてんのか私!」
「ナマエちゃん言葉こわいよ」
「ミョウジくん、言葉には気をつけたまえ!ドコで何があるかわからんぞ!」
「あ、委員長」
みんなでゾロゾロと退場する最中、1位チームだったらしい飯田くんと合流した
「飯田くんあんな超必持ってたのズルイや!」
「ズルとは何だ!!あれはただの“誤った使用法”だ!」
「ウェ〜〜〜イ(楽しかったアレ)」
「なに!?ねぇ何の話!?飯田くんなにしたの!?なんで上鳴くんはアホになってんの!?誰かおしえてよ!」
周りの生徒がワイワイと騎馬戦についてのアレコレで盛り上がってる。記憶のない私は当たり前だけど置いてけぼり感半端ない。
こんな孤独ぼっちの私の気持ちを理解してくれるのは…同じ境地に立った尾白くんしかいない!
あの時の状況も確認しておきたいし、お昼でも一緒に……
「アレ、尾白くんは?」
「え?先に行ったんちゃう?」
「尾白くんなら後ろじゃないか?」
もっと自己主張しようよ尾白くん!!!
「(えっと、こっちは競技場の方だから、こっち、かな?)」
迷ってない
「(ん、あれ、誰も居ない通路でちゃった…)」
迷ってないぞ
「(えっと、今こっちから来たから…こっち行くと……どこだここ)」
迷ってなんか………!
「…うそん」
迷ったわ。尾白くん探してあれやこれや通路移動してたら…!嘘でしょもういい歳なのに!
これはアレだ…広すぎるくせに誘導看板が雑な学校側が悪いんだわ…お昼で見回りもいないし、完全お手上げだわ。
適当にテレポートしたくとも、今現在の自分の位置がわからない以上ヘタに飛ぶことが出来ない。
なんて使えない個性なんだ私…。
「(とりあえず、一旦外に出ればなんとかなるよね)」
ぼーっと立ってても仕方なし、一度外に出て学校関係者出入口を探せばなんとか…ん?
「(なんか、話し声…?よかった生徒か誰かいるのかな)」
少し後ろの角の方から、男子生徒と思われる声が聞こえてくる。
その声が低いのと微妙な距離から内容までは聞き取れないケド…道を聞いてみようかな、なんて安易な考えで角を曲がったのは良かった。そう、別にいいの、そこは問題じゃなかったんだけど
「っっっ!ばくごぉっ、んー!」
「るせ、黙ってろ」
曲がった角のすぐ側に爆豪くんがいた。
それにも驚いたけど、何を思ったのかいきなり私の頭と口を(ってか顔を)掴んで塞いできた。
当たり前だけど苦しい!死んでしまう!ただでさえ疲労してるのに何なのこの仕打!?そんな苛立つことした覚えがないのですがぁッ
「ん、むーー!」
「るせっつてんだろ、空気読めや」
「ほ、ほんん?」
息ができないと察したのか、鼻だけ手の隙間から出してくれた爆豪くん、優しいねとか思わないよ!これかなり滑稽な格好だからね!!?
そんな視線はガン無視の彼は、奥の通路から聞こえる会話に夢中なようで…
「(あ、これ轟くんと緑谷くんの声だったんだ…)」
「実績と金だけはある男だ…親父は母の親族を丸め込み、母の“個性”を手に入れた」
これ、轟くんの家の話…?こんな、立ち聞きしていいものじゃ…
ちらりと視線を上げて爆豪くんの様子を伺う。正直彼もどうしていいかわからないような顔をしていた。多分彼も偶然ここにいたんだろう。立ち去るにも出口は轟くん達のいる方にしかないし…
「『おまえの左側が醜い』と母は俺に煮え湯を浴びせた」
「…」
「…」
彼の言葉に緑谷くんも何も言えない。
爆豪くんも私も、聞こえてきた言葉を理解しても反応を示すことが出来ない。
ふと、彼の顔を思い出す。赤い髪の下、青磁色の瞳を取り巻く隠しようもない傷跡。あれを彼のお母さんが…?
そう考えただけで胸の奥がギュッと絞まる。
同じ学校の、同じ教室にいる人に、こんな過去があったなんて…
私、なにも知らなかった。当たり前のことかもしれないけど、それがどうしようもなく情けなくて、彼に謝りたくなった。
「(そんなことしても意味が無いんだろうけど…)」
「言えねえなら別にいい、おまえがオールマイトの何であろうと俺は右だけでおまえの上に行く。時間とらせたな」
そう言ってその場を後にしようとした轟くん。
今ここで私がどうこうしちゃいけないのは、流石にわかってるけど…でも…
「僕は…ずうっと助けられてきた、さっきだってそうだ…僕は、誰かに救けられてここにいる」
「っ!」
轟くんの言葉を受けて、出した緑谷くんの答えは
「でも僕だって負けらんない、僕を救けてくれた人たちに応えるためにも…!さっき受けた宣戦布告改めて僕からも…僕も君に勝つ!」
もしかしたら、轟くんが一番欲しかった言葉だったのかもしれない。
あの人もその人も想いを胸に、いざ
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