『先頭が一足抜けて下はダンゴ状態!上位何名が通過するかは公表してねえから安心せずにつき進め!!』

やっと、やっとの思いでトップの二人にたどり着いた。
爆豪くんの言う通り、この個性で出遅れるなんて間抜けもいいとこだけど…
こっからいい勝負してみせる!

「(にしても、やっぱ二人とも足はやぁ!)」

綱渡りゾーンから次の関門に行くまでの道のりを、全力に近い形で走る。
多分二人は牽制しながら走ってるんだろうけど、一歩半後ろを走る私はもう息も上がってきてる。
個性で前出たとしても直ぐに追いつかれるだろうし、無駄にスタミナを削ってしまう可能性のほうが高い。
くっそう、やっぱりスタミナつけまくらないと!

「!」

前方の二人が一瞬だけ足を止める。その先には格子線に囲まれたフィールド

『そして早くも最終関門!!かくしてその実態はー…一面地雷原!!!怒りのアフガンだ!!地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!!目と脚 酷使しろ!!』

「げっ」

こ、ここに来て足をすくう系!?

「(最悪だ最悪だ、よりにもよって最終関門で一番個性使いづらいのキタッ!)」

地雷の威力はケガをしない程度らしいけど、絶対時間ロスするでしょコレ!
闇雲に飛んだらポチッと爆破が目に浮かぶ…
しかも先頭は踏み荒らされてない、まっさらな状態の道を進まなきゃいけないときた。
やっぱり最終だけあって、後列が追いつきやすい内容なのね!

「っと、エンターテイメントしてやがる」
「今までだって充分エンターテイメントだったよ!?」
「はっはぁ俺は関係ねー!!」
「うわっ!」

足元を確認しながら前を進む轟くんの言葉を拾いながら後を追うと、物凄い爆風で飛んでいく爆豪くんがスレスレで横切ろうとしていた。
てか危ないって!地雷よりも爆豪くんのほうが怖いって!!

「てめぇ宣戦布告する相手を間違えてんじゃねえよ!」

叫びながら轟くんを追い抜こうとする爆豪くん。
開会前に轟くんが緑谷くんに言ったことを気にしてたんだ。

「(私だって…!ここまで来て!負けたくない!)」

自分の目の前で先頭が目まぐるしく変わっていく。
轟くんが前に出れば、爆豪くんが爆発を強めて一歩前へ。そう思ったら爆豪くんの腕を凍らせてまた一歩前へ出ようとする轟くん。
二人も足元を気にしながら走ってるんだろうけど、どうしても追いつけない!

もういっそフィールド外まで飛んでしまおうか…いや、それだと多分コースを外れたとみなされる。
障害物競争で障害を丸々パスするなんて反則もいいとこだもの
どうする…考えている間にまた少しずつ彼らとの差が開いてくる。
後ろからは追ってきた人たちの足音。体力と脚に自信がある生徒はそれこそ先頭に追いつこうと必死だ。

焦る、追いつけない、追いつかれる…でも飛べない!ここまで来たのに!個性が使えないことが敗因になるなんて!!

「っ!」

グッと口元に力を入れて堪える。ここで考えることを止めちゃダメ。最後の最後までチャンスを見逃しちゃダメ!

まだ!追いつける!!!

先頭二人の走った場所を覚えて後を追うとした瞬間だった。
後方から競技の地雷とは思えないほどの大爆発と爆風、それと…

「みっ緑谷くん!!?」
『後方で大爆発!!?何だあの威力!?偶然か故意かーA組 緑谷、爆風で猛追ー!!!?…っつーか!!』

鉄板のようなものにしがみついて爆風に乗ってくる緑谷くん
えっもしかしてあの入試ロボットの!?嘘でしょここまで持ってきたの!??
もしかしてあの爆発も、爆風も全部緑谷くんが…?

「ま、じかぁ…」
『抜いたあああああー!!!』

走り続ける私達のギリギリ上空を越えていく彼
個性を使わないで…先頭に…!

「デクぁ!!!!!俺の前を行くんじゃねえ!!!」

「後ろ気にしてる場合じゃねえ…!」

恐ろしい勢いで爆豪くんが緑谷くんを追い、更に轟くんも氷の個性を使って前へと出る。
二人とも個性を上手く使ってる、当然だよね、もうフィニッシュ近いもの
私も更に力を込めて走る。せめて、これ以上離されないように!

「(でも、緑谷くんあの状態からどうやって着地するの!?)」

見るからにバランスを崩して失速している
このままだと地面に落下して、その間に二人に(それどころかヘタしたら私にも)抜かれ…

「っあ!」

失速して落下する途中、鉄板の重みを利用して一回転する緑谷くん。
一瞬、本当に一瞬だけど彼と目があった。
真っ直ぐで、何一つ諦めてない、むしろここからだって強い瞳だった。
だから分かった、彼がしようとしていること

「二人とも危ない!」
「!!」
「!」

一回転した勢いのまま、もう一度地雷を使って爆発を起こし再度前へと飛ぶ緑谷くん

『緑谷 間髪入れず後続妨害!!なんと地雷原クリア!!』


そのまま全力でゲートへと向かう彼は、そのままー

『さァさァ序盤の展開から誰が予想出来た!?今一番にスタジアムへ還ってきたその男…緑谷出久の存在を!!』


第一種目の首位を手に入れた



「はぁ、はぁ、はぁ、緑谷!くん!!」
「あ!ミョウジさん!ごめんさっき凄い近くで地雷使っちゃたけど…大丈夫だっ…」
「なんなの君!」
「ぅえ!?ご!ごめん!?」

爆風を逃れた私達は直ぐ様体勢を立て直してゴールした。
最後、轟くんと爆豪くんは僅差過ぎて、後ろにいた私からは勝敗は分からなかった。

「凄くない!?凄すぎでしょ!?何アレ最初からするつもりだったの!!?」
「い、いや、コースの内容は知らなかったよ!?で、でもあの装甲何かに使えそうだと思って…」
「持ってきたっていうの!?最初の関門からずっと!?」
「う、うん…結局最後しか使えなかったケド」

爆豪くんも含んだ爆発を間近で見過ぎたのと、ゴールしたことの興奮でつい彼に食い気味に詰め寄ってしまった。
いや、でもだって…

「凄すぎ…でしょお〜あんな…あんな…」
「だ、大丈夫ミョウジさん!?」
「あんな、凄い人達に個性使わないで勝つとかぁ!もうっもぉーー!!」
「えっなっ泣いてッ!!??」
「泣いてないよ!ちょっと感動しただけだよ!!あと悔しくて!」
「かっ感動とか!そんな…僕は…運が良かっただけで…」

頭が軽くパニックになってるのか、目頭が熱くてしょうがない。
あの瞬間、私も個性を使えなかった。個性を使わないでトップを目指す辛さを感じ取っていた。
そんな時、緑谷くんは個性を使わずにトップに立った。彼は運が良かったと言うけれど、そんなことはない。
序盤から装甲をずっと抱えて走って、あの綱渡りゾーンもきっと自力で越えたんだろう。
使えるかどうかの確証はない、それでも、耐えて耐えて…彼は最後に苦難をチャンスに変えたんだ。

ふと、あの事件の時の緑谷くんを思い出した。
勇猛果敢にトップヒーローを助けに行こうと飛び出した彼。結果として何も出来なかったと言っていたけど、私はそうは思えなかった。


「…緑谷くんは目が離せないね。何するか分からない、見ててハラハラするよ!」
「えぇ!?いや、え、それどういう意味…?」
「スゴイやつだねって意味!」
「ッ!ち、近いよミョウジさん!!!」
「あはは、トップ持ってかれた仕返し!」

少し休んで落ち着いたところで彼の周りをウロウロする。いやー、相変わらずの反応でさっきまでトップ争いをしていた人とは思えないなあ。

「ナマエちゃん…!デクくん…!すごいねえ!」
「この個性で遅れをとるとは…やはりまだまだ僕…俺は…!」
「麗日さん、飯田くん」
「二人ともお疲れ様ー!」

緑谷くんで遊んでいるとお茶子ちゃんと飯田くんが到着する。
その後ろではゾクゾクと他の生徒達がゲートをくぐっているのが見えた。

「一位すごいね!悔しいよちくしょー!」
「いやあ…(また近い…)」
「ミョウジくんも凄いな!女子では最速じゃないか!」
「上位三位には入れなかったけどねー、飯田くん出し抜いたのに残念だなあ」
「あ!そういえばあの時の行為についてだが!!」
「(ヤバイ余計なこと言った…!!)」

飯田くんのよくわからない身振り手振り付きのお説教が始まる。
ああ、長くなりそうだなぁ、早く次の種目の説明こないかなぁ…

「いいか!どんな時にでも挨拶はキチンと行うべきだ!」
「(あれ、そういえば轟くんと爆豪くんは…)」

私よりも先に到着しているはずの二人を軽く探してみる。
爆豪くんは殊の外スグに見つかった。だって凄い騒いでるから…ああ、すっごい顔。鬼の形相とはまさにこの事だなぁ切島くん辺りが上手く宥めてくれるといいけど…

「(轟くんは)」
「聞いてるのかミョウジくん!?」

轟くんは到着した皆から離れるようにA組の定位置に向かっていた。
ここからでは後ろ姿しか確認できない、でも…

「(なんだか…悲しそう、哀愁ってああいうこと言うのかな。話かけ…ない方がいいよね、今私が何言ってもなあ…)」
「ミョウジくん!今俺が言ったこと聞いていたか!?」
「え?あ、うん、申し訳ないことしたなって反省してたとこ」
「うそやね」
「ミョウジさんって、時々適当な事言うなぁ」
「ミョウジくん!君ってやつはぁあ!!!」



第一種目 結
悔しいよ、でもなんでかな、スッキリしてる


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