2週間前、敵に遭遇した時に比べると少しは思ったように身体が動いていると思う。
咄嗟の判断力の大切さを身に染みて感じ取ったその経験は、どんな授業よりも学ぶことが多かった。
もっとこう出来たんじゃないか?あの時こうすれば良かったんじゃないか?

後悔よりも反省を。悔しさを教訓に。

『一足先行く連中A組が多いなやっぱ!!』

私達は一歩づつでも前に進んでいる。

「(さっきの騒動で大分出遅れちゃったけど…まだチャンスはあるはず!)…ってあれ」
『オイオイ第一関門チョロイってよ!!んじゃ第二はどうさ!?落ちればアウト!!それが嫌なら這いずりな!!ザ・フォーーール!!!』

長い階段を登り切ると、そこにはなかなか動こうとしない先頭集団の塊。
目の前に広がるのはどこぞのインディ的に乱立する断崖絶壁。申し訳ない程度に張られているロープがここをそうやすやすと通さないと物語っている。

「…どんだけ大規模なの!」
「本当、大げさな綱渡りね」
「あぁ!蛙吹さん速いっ!!」
「梅雨ちゃんと呼んで、お先にねナマエちゃん」

カエルの個性の彼女にしてみれば、頼りげないロープも普通の道と大差なく移動できる。うーん、凄い!

「フフフフフフ来たよ来ましたアピールチャンス!私のサポートアイテムが脚光を浴びる時!見よ全国のサポート会社!ザ・ワイヤーアロウ&ホバーソウル!!」
「サポート科!!」
「ヤダなにそれカッコイイ!映画みたいな装備!」

隣で奇声を上げていたサポート科の生徒、めっちゃカッコイイ装備なんですけど!?それもしかして自分で作ったの!?

「ウフフフフ、私のドッ可愛いベイビーを見初めるとは…貴女いいセンスしてますね!」
「ナマエちゃん…」
「え、ヤダなんで引いてるのお茶子ちゃん」
「ミョウジそれはないわー、ってかアイテムの持ち込みいいの!?」
「芦戸さんまで!?」

なぜ伝わらないあのセンス!

「ヒーロー科は普段から実戦的訓練を受けてるでしょう?公平を期すため私達は自分の開発したアイテム・コスチュームに限り装備オッケー!といいますかむしろ…サポート科にとっては己の発想・開発技術を企業にアピールする場なのでスフフフフ!!」

そう言うと彼女は企業に向けてなにやら叫びながら飛んで行ってしまった。なんてパワフル!
そんな彼女に触発されてか、次々と周りが動き始める。

「(アピール…多分私もここがアピールポイントだ!)」

大勢の生徒が固まって動いている場所よりも、一人一人のスペースがある程度取れている今が目立つチャンス!特に私の個性の見せ場は一瞬すぎるから見逃される可能性が高い。
その点この関門なら同じ行動を取り続けても不自然じゃない!

「…よし!」

動きは大きく大胆に、少し後ろに下がって助走をつける。スタートの崖から程よく離れた島に座標を定めて…

「おいあぶねぇぞ!」
「この距離飛び越える気か!?」

飛ぶっ!


「おそらく兄も見ているのだ…かっこ悪い様は見せられん!!!っ!?」
『カッコ悪ィィーーーー!!ん?』
「うわぁー!ごめん飯田くん!!邪魔するつもりはなかったのおお!!」

飛んだ島の先に猛スピードで綱を滑っていた飯田くんと危うくぶつかりそうになってしまった!
一応誰もいない島を狙ったつもりだったけど…移動するの速いな飯田くん!

「本当ごめん!怪我とかない?避けようとして足捻ったりしてない!?」
「いや!大丈夫だ問題ない!しかしいきなり前方に現れるのは危険だぞ!特に足場の悪い場所では二次・三次の事故を招く可能性が…!」
『オォーット!ミョウジの乱入に飯田の説教タイム突入だ!真面目か!』
「何してんだあいつら…」

わざとではないにしろ、危険な行為には変わらないので素直に説教は受ける。いや、本当に申し訳ない

「競技中とはいえ、危険な行為は反感を買うぞ!」
「うん、ごめんね。忠告ありがとう」
「いや、俺も人の見せ場を奪うつもりはない。今回の件はまた後日注意する事にしよう!」
「う、うん(真面目だ!)」
「よし、お互い良いプレーをしようじゃないか!」
「そうだね!それじゃお先に!」
「ああ!?」

飯田くんの説教が終わるやいなや速攻で次の座標へ飛んだ。
いや、だって飯田くん先に行っちゃうとまたぶつかりそうだし…

「(なにより私見せ場がこの先あるとは限らないもんね…少しでもここで点数稼がないと)」

後ろめたい気もするけど、後ろからガンガン飯田くんのターボ音がするから気は抜けない。ごめんね、ここは譲れない!
少し走ってはまた次の島に飛ぶ。普通に綱を渡っている人たちをどんどん追い越して前へと出る。


『さあ先頭は難なくイチ抜けしてんぞ!!』
「くそがっ!!!」
『先の2人も気を抜くなぁ!さっきからガンガン飛んでくるガールがいるぜぇい!!』
「「!!」」

「やっと、追いついた!!」

「(来たな、ミョウジ)」
「その個性で出遅れやがって!チョコチョコ飛んでんじゃねーぞ!!」


お待たせしました
これでも飛ばしてきたんだよ!



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