「1年ステージ生徒の入場だ!!」

暗くて長い通路を皆と歩く
今日の戦いの舞台となるステージへの入り口から漏れる外の光が眩しい


「いよいよやね、ナマエちゃん…」
「うん、がんばろうお茶子ちゃん」
「うん!…お父ちゃんの為にも」

彼女の家庭の事情は先日学校帰りに聞いたもの
本人は「なんか不純な動機で恥ずかしい」って言ってたけど、充分素敵な親孝行だよ


「うち負けないよ!ナマエちゃん!!」
「私も…全力でいくよ!」


お互いの顔を見て笑い合う
今日は敵同士、でもずっと仲間同士


「……!!……!鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!」


入り口の奥からプレゼントマイクの実況が聞こえてくる。随分と盛り上げてくれているようだ。


「ヒーロー科!!1年!!!A組だろぉぉ!!?」

「っ!(うっわぁ)」
「わあああ…人がすんごい……」
「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるか…!これもまたヒーローとしての素養を身につける一環なんだな」


ただ目立つのが好きって気もするけど…。相変わらず冷静な飯田くん、凄いね君!
みんなも少しからず浮足立ったのに……(中にはテンション上がってる人もいるけど)


「(B組の子たち初めて見る子ばっかりだ。隣のクラスなのに接点少ないし…やっぱり個性とか凄いんだろうな)」
「ソワソワしてっとなめられるぞ」
「あ、轟くん…ごめん、なんか気になっちゃって」


周りが気になって足を止めているとクラスの後方まで来てしまったようで、いつの間にか隣が轟くんになっていた。


「B組が気になるのか?」
「ん、同じヒーロー科だし。個性の詳細とか分からないし」


入試の時、もっと余裕があれば周りの子を気にしてたんだろう。が、あまりにも精一杯だった記憶しか無いために、個性を知っているどころか見覚えがあるかも微妙な感じである。


「相手が何だろうと関係ねぇ。敵と戦った時も同じ条件だっただろ」
「あ…」


確かに、敵と遭遇した時も当たり前だけど相手の情報なんて無かった。
後手にならないように先に攻撃に回ったり、先手を打たれたら対策を講じたり…


「実力がねぇわけじゃねえんだ。物怖じすんなよ」
「うん、ありがとう!…なんかいつも誰かにアドバイス貰ってばっかりだ」
「…誰か?」
「爆豪くんにもね、ガンガン前出ればいいって、人の評価気にしないでやりたいようにやれって、言ってもらったから、あ、噂をすれば」
「………」


18禁ヒーロー、ミッドナイト先生による合図で爆豪くんが壇上へ上がる。
どうやら入試1位だったらしい彼が今回の選手宣誓をする様だ。
A組を始めとする生徒が、彼の後ろ姿をじっと見つめる


「(なんかやらかしそうだな…)」

ふと、2週間前の爆豪くんを思い出す。
まさかとは思うけど…


「せんせー。俺が一位になる」
「絶対やると思った!!」
「調子のんなよA組オラァ!」
「何故 品位を貶めるようなことをするんだ!!」
「ヘドロヤロー!」


案の定、生徒、大ブーイングである
でも爆豪くんの底抜けの向上心と煽り性分は賞賛に値すると思うよ!


「あはは、またやらかした。爆豪くんらしいね」
「……」
「轟くん?」

「さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう!」


轟くんの様子を窺い見る前に種目発表が始まる。
演出はド派手なのになんでも早速したがるのはヒーローだからだろうか?


「いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を飲むわ!!」
「(今、ティアドリンクって言った?)」
「さて運命の第一種目!!今年は……コレ!!!」


セクシー過ぎる彼女の後方スクリーンにデカデカと文字が映し出される。

「(障害物競走…か…)」

コース外周を使ったクラス総当りのレース。
巨大なゲートが物々しい音を出しながら開いていく


「我が校は自由さが売り文句!ウフフフ…コースさえ守れば何をしたって構わないわ!…でも忘れないでね、これは自分を魅せるレース!一瞬でゴールなんて味気ないことこの上ないわよ!注目が欲しいならエンターテイメントしなきゃね…」


後半の言葉は、私のように移動に特化した個性持ちへのものなんだろう。
その気に慣れば一瞬でゴールまで飛べる。コースを外れるかの判断も微妙なとこだが、なにより”見せ場”がない。


「(個性を使いまくるだけじゃダメ…ってことね)」
「ミョウジ」
「ん?なに、轟くん」
「滑って怪我すんなよ」
「え」


そう言うと人ごみに紛れるように前へと進んでいく彼。あっという間に見えなくなってしまった。
滑る?転ぶ、じゃなくて?

そうこうしているうちに頭上のスタート合図の赤いライトが消灯し始める
全て消え終わったらスタートだ


「いよいよ…」


はじまる


「スターーーーーーート!!」



駆け出す、今
精一杯戦うことを誓って


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