「わ、わたしが…するよ?」
「!」


彼女からの突然の申し出に言葉を失う。
今のは本当にナマエが言ったのだろうか、もしかしたら俺の願望による幻聴かも知れねえ。
あまりにも都合の良すぎる、頭の何処かで期待していた展開に疑いをもつ。
が、背中に感じる体温は確かに彼女のものだ。
暖かく、信じられないほどに柔らかい。本当に同じ人間なのか、なぜこうも女の体は男を惹きつけるのか。
まあ、俺が惹きつけられるのはナマエだけなんだが…

余計な思考はともかく、今は現状をしっかりと把握しなければならない。
俺としてはこのまま流れに任せて最後までしたい。当然だ。
だが、そうもいかない


「…まだ、最後までする覚悟はねえだろ」
「う、…そう…だけど」


俺の都合だけで事を進める訳にはいかない。
ナマエは性欲処理の道具ではない。代わりのない、唯一無二の存在だ。俺の身勝手な劣情でコイツを傷つけるわけにはいかねえ。
それでも、男ってもんはどうしようもなく出来てるらしい。己の欲に反すことなく、事の流れを支配しようとする。


「なら…やってみるか、手で」
「えっと、前やったみたいに?」
「ああ、…今度は直に触ってみろ。出来るか?」
「えっ」


俺の浅ましげな提案に顔を強ばらせる彼女
暫く視線を右往左往させた後、意を決したように俺を見つめてくる
さあ、どうでる


「…うん、出来るよ…多分」


上手く出来るかは分からない、と視線が語ってくる。
それでも必死に俺に縋ってくる姿が堪らなねえ。可愛すぎるだろ
抑えきれず口元がゆるむ。それを隠すように唇と額に口付ける。


「いい子だ」


これだからコイツから離れられねえんだ。



以前と同じように俺がベッドに腰掛け、ナマエを前に座らせる。
ベッドからは彼女の匂い、目の前には上に何も纏っていないナマエ。これで反応しないワケねえだろ


「あ、あのさ、焦凍も上脱いで?私だけ恥ずかしい…」


これから下を脱ぐ俺に言うのか。
まあ別に脱ぐのは構わねえ、特に恥ずかしいとも思わねえからな。
言われた通りネクタイを外し、シャツを脱ぐ。ナマエの視線が異様に強い気がするが、女が男の好きな仕草の中にネクタイを取るってのがあるって聞いたな。よくわかんねえが、その視線は悪くねえ。
さっさと脱いでベルトに手を掛けると急に余所余所しくなるナマエ。その初々しい感じも煽りの材料になるって知ってんのか?


「お前が脱げっつったんだろ」
「う、上って言ったもん!」
「下も脱がねえと出来ねえだろ」
「そっ!そうだけど…」
「…最初は見てろ」
「え?」
「俺がやってるの見てろ。覚えろよ」


俺が何を言ってるのかわかんねえって顔してやがるな。
悪いが悠長に教えやれるほどの余裕はねえ。ナマエならある程度見せれば学ぶだろう。
半場押し切るように下の衣類に手を掛ける。まあ分かってはいたが、自身の猛りに笑っちまう。


「っ!」
「怖いか?」
「だっ、大丈夫!」


何が大丈夫なのかはわからないが、必死になっている姿がいい感じだから良しとしよう。
ひとしきりナマエの頭を撫で、そのまま右手を自身へと移す。後は慣れた作業だ。普段と違うのはナマエが見ているということだけ。
それだけのハズなんだが


「(やべえ、なんだこれ…)」


無性に興奮する
ナマエが食い入るように見ている事実に堪らなくなる。俺にそういう趣味はねえって思ってたんだがな。
ナマエがいるだけでこうも違うものなのか。
彼女の赤い頬が、濡れた視線が、俺を狂わせる。その熟れた唇に無理やり突っ込みたくなる。分かってんのか?オマエ、今も俺の頭ン中で犯されてんだぞ。


「はっ、…く、」

知れず口から漏れる息が熱くなる。
やべえ、程々にしとかねえとな。
惜しむ欲に叱咤し、手の動きを止める。


「…、…手、出せ」
「あっ、うんっ……これでいい?」


ナマエの小柄で柔らかい両手が俺のを包む。ひどく安心するのはなんでだ。


「ああ、そのままやってみろ」
「う、うん」


慣れぬ手つきが逆に刺激になる。遠慮がちにも思える動きでさえ今まで感じた事のない快楽を生む。
堪えろ、まだだ、もっと彼女を感じていたい


「はっ、はぁ、…ナマエ、ナマエ」
「焦凍…、きもち、いいの?」
「ああ、すげえ」


言うとナマエが微笑む。やめろ、そんな顔どこで覚えてくんだ。
根元から刺激され、先端を重点的に攻められるとなす術がない。浮いてしまいそうになる腰を沈め、ただただ快感に身を投じる。
竿を滑る手が俺を追い込む。先走りの液が潤滑材となり、いよいよその時が迫ってくる。


「くっ、出る…ナマエ、出すぞ」
「ん……え!?あ、ど、どうすれば!」
「うっ!…は、あ、」
「っ!ぁっ!!」


やっちまった
出す瞬間の対処に困ったのか、ナマエが一瞬手に力を込めたのがいけなかった。
俺も予想外の刺激にまんまと達してしまった。そのせいで手で覆うことも避けることもできなかったナマエの顔にそのまま出してしまった。
所謂、顔射というやつだ。男のロマンを意図せず叶えてしまった。
惚けた顔で俺を見ているナマエの目が、俺を責めているようにも見えた。


「…悪い」
「…ど、どう、いたしまして?」


まずい。割と本格的に混乱しているようだ。



轟焦凍のステップ4
後処理は彼にお任せしましょう


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