「衰えた?嘘だろ…完全に気圧されたよ、よくも俺の脳無を…チートがぁ…!」

オールマイト先生の圧倒過ぎる力を見せつけられた敵は私達が見ても分かるほどに動揺していた。

「全っ然弱ってないじゃないか!!あいつ…俺に嘘教えたのか!?」
「………どうした?来ないのかな!?クリアとかなんとか言ってたが…出来るものならしてみろよ!!」
「うぅうぉおおぉおおぉおおぉお…!!」

先生の強い圧しがこちらまで伝わってくる。なんて気高く尊いヒーローなのだろう。

「さすがだ…俺たちの出る幕じゃねえみたいだな…」
「うん…でも」

何故、こんなにも儚くみえてしまうのだろう。

「緑谷!ミョウジ!ここは退いたほうがいいぜもう。却って人質とかにされたらやべェし…」

緑谷くんも何か違和感を感じているのだろうか?
今にも崩れ落ちそうな…消えてしまいそうな…トップヒーローに有るまじき姿を感じてしまう。
そんなこと、ないはずなのに…


「さぁどうした!?」

更に先生が追い打ちをかけている。敵達も迂闊には手が出せないのか、先程から動かない。


「主犯格はオールマイトが何とかしてくれる!俺たちは他の連中を助けに…」
「緑谷、ミョウジ」

そうだ、今度こそ皆を助けに行かなくちゃ。左腕に見える装備のポイントは未だ戦い続けている場所も示している。でも、なんなのこの不安は、何か大切な何かを見落としているような…


「僕だけが…知ってるんだ…」
「緑谷…くん?」


動こうとしない彼が何か呟いている。聞き取ることは出来ないけれど、きっと彼も何かに気づいているんだ!


「何より…脳無の仇だ」

意を決したように敵が動き出す。ダメ!今ここを離れちゃダメ!!


「っ!緑谷くん!!!」
「な…緑谷!!?」

一瞬だった。彼に話しかけようとする寸前、瞬間の事だった。
気がつけば緑谷くんはオールマイト先生と敵の前に飛び出していた。
個性を使ったのだろうか、両足があらぬ方向に向いている。あれじゃ着地もままならない!


「緑谷くん!」

待ってて!1人で戦わせたりなんてしない!!


「行くな!ミョウジ!!」

また、誰かに呼ばれた気がした。それでも後ろを振り返る事なく飛ぶ。トップヒーローを救うために飛び出した勇気ある友人の元へ





「オールマイトから離れろ」
「二度目はありませんよ!!」

「それは!こっちのセリフっだ!!」

緑谷くんがモヤと手の男の攻撃を受ける瞬間、彼の元へ飛んだ。そのまま彼の手を掴んで少し離れた場所にもう一度飛ぶ。
あまりにも一瞬のうちに個性を連発したからか、思った以上に飛べなかった。
まだ敵は目の前にいる


「あなたは…ゲートで飛び出してきた女子生徒ですね!私と似た個性…面倒ですね」
「誰であろうと関係ない、邪魔者は消すだけだ…」

「もう、あんたに飛ばされたりしない!誰も!!」
「ミョウジさん!」


敵前目下、両足の折れた緑谷くんと戦闘に不向きな個性の私。あまりにも不利だ。
でも、逃げ出すわけにはいかない!!絶対に!!

「黒霧、殺そう」

モヤが広がり私達を包もうとする。目の前にはあの男の手が…



「!!!!」


どうしようか、どうすればいいのか敵の攻撃に一瞬怯んでいる瞬間だった。
目前の手が銃弾に撃ちぬかれた



「来たか!!」

「ごめんよ皆、遅くなったね。すぐ動ける者をかき集めて来た」
「1-Aクラス委員長 飯田天哉!! ただいま戻りました!!!」

「あ、い、飯田くん…いいんちょ…」


戻ってきた…!飯田くんが!ヒーローを連れて!!
ゲート付近には数多くのヒーローの姿、でも私には飯田くんの姿が一番頼もしく見えた。
ありがとうっありがとうっ!


「あーあ来ちゃった…帰って出直すか黒霧……ぐっ!!!」


逃げようとする敵をヒーローたちが行く手を阻む。それでもワープゲートが広がるのは止められない。


「今回は失敗だったけど………今度は殺すぞ平和の象徴オールマイト」


不気味な言葉だけを残し、脅威は去った。
敵を撃退した、でもこれは…勝利ではない


「………っ!」
「み、緑谷くん!大丈夫!?」

「………何も…出来なかった」
「そんなことっ、ないよ、」

君はあの瞬間、誰よりも勇敢だったよ
ヒーローが来たためか、敵が去ったためか、一気に体の力が抜ける。悲しいわけじゃないのに涙が止まらない


「その通りだ」

近くにオールマイト先生の声が聞こえるけど、砂埃と涙で姿は確認できない。


「あの数秒がなければ私はやられていた…!また救けられちゃったな緑谷少年。ミョウジ少女も、ありがとう」

「オールマイト先生…」
「無事で…良かったです…!」


終わったんだ、やっと、終わった…



涙 ながし
戦闘の終結を噛みしめる


prev / next

△mainへ戻る


△TOPへ戻る