「なぁ、轟、ミョウジと喧嘩でもしたのか?」

午後の演習中、峰田が無駄に絡んでくるのはもう慣れた。ただ、今日は近くにミョウジがいない。普段自由にグループを作るときは大抵一緒だったが、ここ最近はお互いに距離を取っている。
まぁ原因は俺にある。


「轟、とうとうミョウジに振られたか…」
「ちげえよ…そもそも付き合ってもねえし」
「えっ!そうなのか!?オイラてっきりカレカノだと思ってた!」


振られてない。と思う。そもそも告白どころか俺のミョウジに対する態度がそういったものから来てるのかさえ疑問だ。
今まで他人に好意を持ったことがない分、その辺のことに関しては疎いと自覚はしている。
性欲がないのとはまた別だがな。


「何でそう思った?」
「なにがだ?」
「何故俺とミョウジが付き合ってると思った」
「いや、お前らしょっちゅうイチャついてただろ」

確かにたまに過度なスキンシップは取っていたかもしれねえ。(主に俺から)
ただそれも今思うと疑問だ。何故ふとした瞬間あいつに触れたくなるのか…近くにいると止まらなくなるのか…


「それに、ミョウジと一緒にいる轟はなんか雰囲気違うからな、いつもと」
「そう、なのか?」
「自覚ねーのか!?んじゃ普段ミョウジのことばっか見てんのも無意識か!?」


青天の霹靂とはまさにこの事だ。俺が、ミョウジを見てる?無意識下に?


「轟って案外アホなのな。もしかして、ミョウジの事好きだって自覚もないのか?側から見てるとバレバレだぜ?」
「………わからない、確証がいまいち持てない」


言うと峰田が哀れみ半分呆れ半分の様な目をしてきた。その顔イラっとくるな。


「轟よぉ、よくミョウジにチョッカイ出してるけどよ、あれは好きだからじゃないのか?」
「…気がつくと手が出てる。理由は深く考えたことねえ」
「(こいつ小学生か!?)んじぁよ、他の女子とかはどうだ?例えば八百万とか!あのヤオヨロッパイ触ってみてえとかねぇの?」


八百万?確かにデカイとは思うが

「ないな」
「(即答かよ)麗日とか蛙吹のは?」
「ない」
「んじゃミョウジのは」
「………拒絶されない範囲でなら」
「…お前って正直だよな」

峰田に言われたくねえ

「まぁ、そういうことだ。轟にとってミョウジは特別な存在なんだって。うだうだ考えてっとハゲるぞ。」
「お前は頭ん中シンプルに出来てそうでいいな」
「オイラの頭は今カンケーねーだろ!」

触りてえ=好きだからっつーのも安直すぎる気もするがな。

「好きか嫌いかで悩むとか女々しいぞ轟!男なら下のムスコに聞いてみろ!」
「お前は下半身に忠実すぎだろうが」

俺もまぁ、人のこと言えねえかもしれねぇが…


「つーか好きでもねえのに手ェ出したとしたら最低だぞ」
「!」
「ミョウジも同じこと思ってんじゃねーか?」
「…お前、たまに鋭いとこつくな」


正に、今の俺とあいつの関係を作った原因はそれだ。半端なこと言った俺が一方的に悪いとわかってはいる。だが、ここからどうしていいのか見当もつかねえ。


「ミョウジにも同じことを言われた」
「…まじか、んじゃ最近お前ら一緒にいないのは…そのせいか」
「………」

「…轟!今すぐミョウジのとこ行ってこい!」
「は?」
「んで告ってこい!」
「出来るわけないだろ」

今のあいつの中の俺の評価なんてたかが知れている。


「男だろ!『ミョウジの事が好きで手ェ出しました。これからも触らせてください』って言ってこい!」
「止めろ、通報される」

やはりこいつと話したのがバカだったか…

「大体、好きだから手ェ出していいってわけじゃねぇだろ」
「………大丈夫だ、問題ない」
「問題だらけだ」
「つっても轟は既に手ェ出したんだろ!?前科持ちなんだろ!なら一回も二回も変わんねーよ!ミョウジだって満更じゃねぇって!だから自分のこと好きなのかって聞いたんだろ!ちくしょー!ムカつくイケメン爆発しろ!」
「落ち着け」

ミョウジも満更じゃない…?
確かに今までも強い抵抗はなかった(気がする)ミョウジは、俺が触れるのを許してんのか?それは、つまり…

「………」
「轟?どーした?」
「………」
「(ヤバい轟がフリーズした)」
「…とりあえずは」
「お?」
「準備だ」
「…は?なんの?」
「ナマエを落とす」
「…えっええええ!?」



轟焦凍のスイッチ5
オイラまた変なスイッチ押しちまったかな


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