「寒い」

なんか寒い。うー。カーディガンでも持ってくればよかったかなぁ。

「ナマエちゃん、どったん?」
「んー、なんか寒くない?」
「ああ、今日ちょっと寒いかもね」
「あー、お茶子ちゃん手ェあったかいぃ」
「つめたっ!ナマエちゃん、めっちゃ冷えてるね」

特に酷い冷え性とかではないけど、どうも今日は体温が低い気がする。

「ミョウジ、どした寒いのか?オイラが暖めてやろうか?」
「私にはお茶子ちゃんがいるのでノーサンキューです」
「私、ホッカイロ替わりか」

峰田はほんといきなり出てくるなぁ。主に斜め下から。

「ミョウジ」
「あ、轟くん…何?」

こないだの演習以来あまり轟くんとは話してない。なんというか気まずいというか…
あんなことしといて言い訳も何もしなかったし。ロッカーからでて「悪かった」だけって…
あの後、峰田が「ナニしてたんだ!?」って凄いしつこくて大変だったんだから。

「いや…寒いのか?」
「うーん、少し、寒いかなぁ」

ガタガタ震えるわけじゃないけど、なんか肌寒い感じがする。…風邪かな?

「暖めるか?」
「………」
「それさっき峰田くんも言ってたねー。コンビニ弁当みたいだ」
「ミョウジ、気をつけろ!また轟に手ぇ出されるぞ!」
「峰田、黙ってろ」
「………」

別に、信じてないわけじゃないけど、こないだの事もあるからなんとなく警戒しちゃう。
自意識過剰と言われればそれまでだけどさ。自分の身は自分で守らないと…


「…嫌ならしない。」
「嫌ってワケじゃ…」
「体温低いままだと風邪引くぞ」
「んー」
「なるべく、触らないようにする」
「…別に、触るのはいいんだけど」

触り方だよ、問題は。

「…?二人とも何かあったの?」
「麗日、察しろこいつらお年頃ってやつだ」
「峰田、黙ってろ」

私があまりにも触れられるのに渋っているからか、お茶子ちゃんまで不審な目で見てきた。ちなみに峰田は最初から微妙な目で私達を見ている。その目やめろ。


「動くなよ」
「ん、大丈夫」

轟くんがそっと左手を私の頬にあてる。かなり気を使ってくれているようだ。
どこを向いていればいいのかもわからず、彼のネクタイを凝視していると少し触れているところから暖かくなってきた。

「あったかい」
「暫く我慢してろ」

我慢とか…なんか申し訳なくなってきたな。轟くんは親切心で話しかけてくれたのにあんな態度とって。
この間のことは忘れよう。魔が差したんだ。きっと。

「轟くん、ごめんね」
「なにがだ」
「色々と」
「謝るのはこっちだろ」
「ん、じゃ、おあいこって事で」

優しい熱を持った彼の手が気持ちよくて、つい私の手でも触れてしまう。轟ホッカイロ、いいね冬とか大人気になりそう。
暫く彼の手でぬくぬくしてると、反対側の頬にも触れてきた。普段右手は冷気を放つけれど、今は彼の体温で少し暖かい程度だ。

「?」
「………」

ふと視線を上げると、当然ながら轟くんと目が合う。さっきみたいに気まずい感じはなかったので、なんとなくそのまま見つめる。


「轟、いくのか?やるのかミョウジと」
「峰田くん邪魔しちゃダメだよ!いま良いとこ!」

周りが騒がしくなってきた。確かに意図はなくても傍から見たら怪しいかもしれない。そろそろ暖まってきたから離れようと…したけど…

「轟くん、ありがとう。もう大丈夫だよ?」
「まだ冷たい、もう少し」
「も、もう寒くないよ?」
「まだだ」

な、なんかヤバイ気がしてきた。いやそんな、今は周りに皆いるしそんな変な感じにはならないはず
それにしたって見過ぎじゃない?轟くんと目ががっちり合ったまま離せない…
これ、なんか目を離したらヤバイ気がする。私の感が言っている「負けるな」と!

「……」
「……」
「…………」
「…………」
「……………………」
「……………………」

「麗日、なんだコレ」
「見つめ合ってる…のかな?」
「オイラには二人が無言の戦いをしてる気がする」

もうなんか私も何やってるかわかんなくなってきた。なにこれどうしてこうなった。


「ナマエ」
「っ!え?…なに、かな」

いきなり下の名前で呼ばれてビックリした。いや、前にもたまに呼ばれてたかな?
あれ、でも、そういう時って


「…とどろき、くん?」
「………」

なんか凄い眉間にシワ寄せてんだけど!なに、どうした…

ゴッ

「いっぃったぁぁあ!」
「うええ!?どうしたの轟くん!いきなり頭突きとか!ナマエちゃん大丈夫!?」

轟くんが一瞬苦しそうな顔したと思ったら、いきなり頭突された。頭が、痛い!

「…悪かった」
「いきなりどうしたの!?私何かした!?」
「……いや、俺が悪い」

悪かった、ともう一度謝罪して轟くんは席に戻ってしまった。なんだったの…
でも、もう寒くなくなったから後でお礼は言っておこう。



「轟、轟」
「黙れ峰田」
「オイラまだ何も言ってねえだろ!」
「何も言わなくていい」
「…よく我慢したな!見直したぜ!」
「………黙れ」



轟焦凍のスイッチ3
そう簡単に入れさせない


prev / next

△mainへ戻る


△TOPへ戻る