「どこだよ…せっかくこんなに大衆引きつれてきたのにさ…オールマイト…平和の象徴…いないなんて…」

「子供を殺せば来るのかな?」


昨日まで知らなかった。さっきまで知るとは思いもしなかった。
悪意ある殺意というものがこんなにも冷えているということを。
それが私達に向けられるということを


平和の 象徴を 殺せ


「敵…本物…?なん、で、ここに?」
「敵ンン!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎんぞ!」
「先生、侵入者用センサーは!」
「もちろんありますが……!」

そう言ってる間にも次々と敵が侵入してくる。数が異常だ、来たのはここだけ?なんでここに?目的は…?
混乱寸前の最中、疑問だけが次々と浮かんでくる。そんな悠長はないというのに、身体が動かない。
と、後ろから誰かに肩を掴まれた。

「と、轟くん…」
「怖いなら下がってろ」

言うと私の前に立ち、敵達の視察を始めた。

「現れたのはここだけか学校全体か…何にせよセンサーが反応しねぇなら向こうにそういうこと出来る”個性”がいるってことだな。校舎と離れた隔離空間。そこに少人数が入る時間割…。バカだがアホじゃねぇ、これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」

彼の相変わらずの冷静な判断と言葉に少し頭が冷えた。それでも状況が変わるどころか悪化していく一方だ。
敵の数は落ち着いたものの、目標をこちらに定め的確に進撃してきている。

一番最初に動き出したのはやはりプロヒーローの先生たちだった。
13号先生と上鳴くんに指示を出した相澤先生は1人で敵の中に向かってしまった。
緑谷くんの言う通り、先生の個性じゃ集団戦には向かないんじゃ…

「一芸だけではヒーローは務まらん」

そう言うと一瞬のうちに3人5人と敵を倒していく。
凄い、これがプロヒーローの戦いなんだ…


「ミョウジ、行くぞ。歩けるか」
「うん、ありがとう轟くん大丈夫だよ…緑谷くん!早く行こう!?」
「すごい…!多対一こそ先生の得意分野だったんだ」
「分析してる場合じゃない!早く避難を!!」

飯田くんの言う通りだ。普段ここまで間近にヒーローの戦いを目にできるワケじゃないけど、今はとにかく足手まといにならないように逃げないと。人質になんてなったら最悪のパターンだ。
13号先生を筆頭に避難しようとした時、不意に前方に見覚えのある黒い霧が集まっていた。


「させませんよ」
「!!」

「初めまして我々は敵連合。せんえつながら…この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは
平和の象徴 オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

は?
オールマイト先生を…殺すってこと?それが目的?…本気なの!?

「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるハズ…ですが 何か変更あったのでしょうか?
まぁ…それとは関係なく…私の役目はこれ」

黒い霧のやつが動く前に13号先生が先手を打とうとしだが、二つの影が更に速く前に出た。
爆豪くんと切島くん!いけない!前に出過ぎだよ!!

「ダメだどきなさい二人とも!!」
「13号先生!そいつを飛ばします!!」

前にいるクラスメイトの間をぬって私も前に出る。あの黒い霧は多分私と似た個性だ。何が何でも先手を打たないと手遅れになる!

「おやおや勇敢な女子生徒ですね。ですが、一歩遅いです」
「くっ!」

生徒たちを 散らして 嫐り 殺す

「みんなっ!」
「ミョウジ!」

黒い渦が私達を飲み込む。逃げられない。遠くで誰かが私を呼んだ気がした。







ズズ…ズ…

「っ!!ぅわっ!!」

目の前が明るくなったと思ったら、崩れかけた建物の中。落ちようとしている先にはコンクリートからむき出しの鉄骨が!

「ひぃ!…あっぶな!!」

考えるより先にすぐ横に飛んで難を逃れた。この個性で良かった…空中で方向転換とか私には無理だよ


「ミョウジ!大丈夫か!?」
「あ、切島くんと爆豪くん!一緒に飛ばされたんだ…」
「おい、俺達から離れるなよ」
「えっ、あっ」

着地の心配のあまりに周りをよく見てなかったけど、私達三人を取り巻くように敵達が集まっていた。

「飛ばした先にも潜伏させるなんて…用意周到すぎ…」
「俺たちを殺すことも計画のうちってことだろ」
「ミョウジはオレたちの陰にいろ!絶対守ってやるからな!!」

切島くん…!状況が状況だけにときめいてられないけど、今のはカッコ良かったよ!惚れてまうやろ!

「先に死にてえやつから来い。仲良く爆死させてやる」

うん、なんとなくわかってたけど、爆豪くんどっちが敵かわからないね!でも頼りになる。すごく。

「クソガキどもが」
「舐めてかかるなよ。死枯木さんの言ったこと忘れんなよ」
「”個性”で判断ってか?つっても女の方は攻撃力なさそうだしナァ」
「無力化させりゃ好きにしていいんだろ?」
「男の方は殺すしかねぇナァ」

何やら恐ろしいお話が聞こえる。まぁそうなるわな敵だし。
下手に動いても邪魔になる。どこか違うとこに飛んでもいいけど、この辺は敵だらけと思ったほうがいいだろう。


「よっしゃ!いっちょ暴れるか爆豪!」
「るせぇ命令すんな」

っていっても私も見てるだけ、なんて冗談じゃない!


「おい!女が消えると面倒だから捕まえとけ!」
「お嬢ちゃんあそぼーぜ!」

なんて三下臭いセリフ!!そんな奴らに捕まりたくない!なにか、なにか攻撃する方法を…あ…


「二人とも!こっちの部屋に!!」
「アァ!?」
「どうしたミョウジ!」

「逃すかよ!」

隣の広間の奥に進み、すぐに2人の腕を掴んで飛ぶ。敵達は私達を追いかけてそのまま空っぽの部屋に入っていく。計算通り!
私達が飛んだ先は最初の部屋。すぐ敵達に気づかれるけど、それでいい


「なに追いかけっこさせてんだよ女ぁ!」
「捕まえてみなさいよ!敵連合なんてやっすい名前の奴らにやられるわけないじゃない!」
「ああああああ!?」


安い奴らは安い挑発に乗りやすい。冷静な奴が少なくてよかったわ
敵達がまた私達を追いかけてこちらにまとまって走ってくる
ある程度固まったところで仕掛ける!


「何だこれ!」
「なんで瓦礫が上からっ!」

「下手な鉄砲でも数撃ちゃ当たるのよ」

私達の周りにある瓦礫をめいいっぱい敵の上に個性で飛ばしていく。
幾つかは外れてるだろうけど、敵の半分以上は減らせた。
多分とんでもないトコに飛んでるのもあるだろうけど…まぁ緊急事態なので大目に見てくれるよね。


「すげぇ!ミョウジ!一気に減らせたぜ!やるじゃねえか!!」
「任せてよ!」
「…」

なんかすっごい疲れたけどね。汗がめっちゃ滴る。

「避けた奴らが来るぞ。後ろ退いてろ」

爆豪くんが私の前に乗り出す。確かにアレを避けられる奴はもう私の個性では今のところ打つ手なしだ。この後は彼らに頼るしかない。

「あとはお任せするね、二人とも」

「るっせ」
「任しとけ!」


戦いの最中
負けられない、絶対に


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