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“ナンダカ オナカガ スイタナァ” 『お前は飯が食えないだろうが』 “ニンゲンハ テイキテキ二 コノコトバヲ イウノデスヨネ?” こいつの初期設定はどんな情報が入っているのだ、と、内心つっこみを入れていると、こちらに近づく足音が聞こえた。 「おう、悪いな。煙草、切らしちまって」 ちょっとばつの悪そうな顔をして、トムさんが立っていた。別に今は切迫した取り立てに追われているわけではないのでそんな謝らなくてもいいのに、と思う。 「いえ。大丈夫ですよ、このくらい」 首を振って答えれば、トムさんの視線が俺の手元に向かった。 「珍しいな、お前が携帯やってるなんて」 確かに珍しい事だ。今まで、携帯なんて数少ない知り合いの連絡用にしか使っていなかったから、普通こんな風に待つ時は携帯ではなく煙草をふかしていたものだ。 「ちょっと、ダチに頼まれて、ゲームやってるんすよ」 まあ、よくわからないゲームなんですけどね。と続けて俺は携帯の画面を見せた。 「このキャラと会話をするってだけなんですけど、こっちの予想もつかない返事を時々するから面白いっス」 ほお、とトムさんは言った。「だから、最近お前が楽しそうなのか」 「え、そんなに俺楽しそうっスカ?」 「楽しそうってか、なんか普段より表情が明るい気がするべ」 自覚は無かったが、言われてみると確かに最近は普段の日常を別の視点から見るようになっていたかもしれない。たぶん、サイケだったらこういう風に言うんだろうな、と色々なものを見ながら想像してみたりするようになったからだろう。 そう思うとなんだか恥ずかしくなって俺は、照れ隠しに笑ってみせた。 次 小説top |