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メールで送られてきたアドレスに接続すれば、手抜きなのかシンプルさにこだわったのか分からない画面にゲームの名前らしきものが書かれていた。他にも何か書いてあるが興味ないので読み飛ばして、さっさと登録画面に向かう。 ハンドルネームを求められたので、好きな俳優の名前を入れて進んでいく。ほかにも、誕生日だとか血液型だとか好きな食べ物だとか好きな梵字だとか良く分からない面倒な事ばかり聞かれた。梵字ってなんだ、なにかのマニア向けゲームなのか、と思いつつもこれらも適当に答える。この登録画面が面倒くさすぎる事が、人気がそこそこ止まりの理由ではないかと思う。 そんな長々とした質問を終えると、登録完了の文字とともに、ピロピロと軽快な音が鳴った。 一瞬のブラックアウトの後にゲーム画面が出てくる。 四角い枠で囲まれていて背景は真っ黒。枠の中に三頭身くらいのキャラクターがいた。ドットで作られたそのキャラクターはどう考えても手抜きだった。なんだよ服装全部白かよ。しかも顔も点々で適当だ。まあ、ドット絵だから仕方がないが。 ゲーマーというほどでもないが、昔は幽といろいろやったこともあり、また最近のゲームなどはCMでも見ることからどんなものかは分かっている。しかし、携帯端末になったからと言ってこんなに適当な雰囲気になるのだろうか。しかも背景も黒で何もないし。ドットでも普通は何か、もう少し凝ったデザインにするのではないだろうか。 ちょっと引き気味になっていると、再びピコピコと電子音が鳴って、文字が出てきた。吹き出しが出ているので、キャラクターがしゃべっているという事らしい。 “バジメマシテ! ボクハ サイケ” どうしてハンドルネームを尋ねるところがあるのに、キャラクターの名前が選べないのだろう、疑問でならない。いろいろ言いたいことがあるけれど、面倒くさいので割り切ることにする。そもそもこれはただの治療代だと言い聞かせた。そんなところで少しは大人になったなぁと思う。 返事を入力してください、と下のあたりに出てきたので当たり障りのない返答をした。 『よろしく。俺はハネジマ』 送信してからすぐに返事が返ってくる。 “ハネジマサンハ メンドウクサガリ デスネ!” 何だろう、こいつ。すごくうざい。どこかで嗅いだ匂いがしそうだ。 イラッとして携帯を逆パカしたくなる誘惑を抑えて返事を書いた。 『面倒くさがりで悪かったな』するとまたすぐに吹き出しに文字が現れる。 “メンドウクサイノニ ボクト ハナシテクレテ ウレシイ” そしてキャラクターのグラフィックが変化する。口(だと思われる)の部分のドットが増えた。遠くから見ればなんとなく、笑っているようにも見える顔。 サイケ、ねぇ……。と、俺は小さくつぶやいた。思っていたよりも、人間臭いように思えた。もしかしたら、この斜め上の行くファーストコンタクトも製作者の意図かもしれないが。 確かにこれは少し面白いかもしれないと、また返事を書きながら俺は思った。 次 小説top |