屑 |
……ああ、まただ。 煙草の吸殻を拾おうと腰を曲げるといつも息が詰まりそうな罪悪感に駆られる。心臓の裏が縮まって痛い。 でも、慣れた痛み。 また俺はやってしまったのだ。もう二度とやらないと決めたのに。 いつも通り、といえばいつも通りのこと。 喧嘩を売られて。キレて。殴って蹴って、近くの物を手当たり次第に投げつけて。 ――怪我を、させて。 つまり俺は昔から変わっていないのだ。小学生の時から何も。強いて変わったことは、折るものが鉛筆から煙草に変わったことくらいで。 煙草の吸殻は、きっとその時の俺はよほどの力で踏みつけたのだろう、ひしゃげて中の屑がはみ出していた。そっと摘みあげても、ぽろぽろと崩れていってしまう。それを携帯灰皿の中に入れれば、もうまぎれて何も見えなくなった。 ――次は誰も殴りませんように。 そして俺は、キレた事に懺悔して、こうして誓いながら、祈りながら、潰れた煙草を拾うのだ。 小説top |