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※中学生



水たまりが黒い学生服の足元に出来ていた。

不透明な赤色をしたその水たまりの中に、静雄は立っていた。血が涙のように頬を伝って、ぽたりぽたりと落ちていく。
この赤色は、赤血球のヘモグロピン。
静雄は今日理科で習った事を思い出す。それと、白血球と血しょう板。
静雄は行けることのできる時は、必ず授業に出席するようにしていた。吹っ掛けられた喧嘩で潰れてしまう時もあったが、それでも知らないことを知る、ということは好きだった。

――確か、ニンゲンは血液の半分を無くすと死んでしまうのだって、センセー言ってたっけ。

今、自分はどれくらいの血を流しているんだろう。止まることのない頭からの出血を、実験を観察しているような思いで、静雄は赤い水たまりを眺めていた。静雄の生まれつき色素の薄い茶色の髪は血によって赤黒く染まっていた。そんな髪を伝わって、雫は落ちつづける。ぽたり。ぽたり。ぽたり。いい加減危ないかなぁ、なんてどこか、自分と三歩半ずれたところで思った。

路地裏は、夏だというのに薄暗く、まるで山奥のようにひんやりとした冷気が立ち上っていた。
喧嘩を売られて、ナイフかカッターで頭を切られて、頭に傷をつけた奴らは、静雄が殴って気絶してしまったから、他にいた仲間が助けて逃げていった。しかし、そんなことは全部ずっと昔のような気がした。それらはどうでもいい煩わしい日常で、今はただ赤色がどこまで流れるのかという疑問が静雄の心を占めていた。

午後四時。静かな路地裏で、静雄は立っている。

赤い水たまりの中に、一人、立っている。



(5/26/10)








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