ブラウン



※「目」の設定



「これ、何」
「チョコレートさ」
「嘘だ。先生が買ってくるチョコレートはもっとひらべったくて長方形みたいだった」
「それは板チョコって言うんだよ。食べてごらん。きっと板チョコよりも美味しいよ」

つんつん、と子供の白くて短い指が美しい一粒のチョコレートに触れた。指が無遠慮に自分の体に触れる事にさえ、気品を漂われて敢然と輝きを放つそのブラウンの宝石は、哀れで世界を知らない少年に情けでもかけてやっているかのように、ただそこに変わらずに芳醇な甘さを漂わせるばかりであった。

訝しげに、目線をチョコレートと臨也の顔を行ったり来たりさせていた静雄だったが、相変わらず真意が見えない臨也の笑顔に痺れを切らしたのか、決意を固めてチョコレートを口に入れた。
それから飴玉でも舐めるかのようにそうっと口の中で動かしている静雄を、臨也は見守るようにじっと見ていた。

時間がたつにつれて、目を輝かせて頬が赤く上気する。けれどもそんな自分に気が付いていないのか、静雄はさらに慎重になりながらその宝石を味わっていた。
そして、ついに最後の一欠けらまで消えてしまったのだろう、チョコレートの余韻を名残惜しそうに、唇から舌を出して周りを少しだけ舐めた。小さく見えた赤い舌は、妙に扇情的だ。
自分がしている事に全部気が付いていないのだから、よほど無防備なのかそれほどまでにチョコレートが美味しかったのか。
きっと後者の方だろうと思いながら、予想通りの子供の反応に、臨也は笑いながら頬杖をついて眺めていた。

「どう? 美味しいだろ」

そう尋ねれば、ぼんやりと口元を緩ませてチョコレートに酔っていた静雄ははっと我に返って不機嫌そうな顔を取り繕うと、大変遺憾ながら、とでも言うかのようにぶっきらぼうに、

「……別に、まずくは無かったぞ」











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