もしも俺が死んでしまったとして |
※色々と痛い もしも俺が死んでしまったとして。 その世界は変わらずに正常に当たり前のように今までの日常を刻んでいくのであって。自分の力では何も動かすどころかむしろ誰かに操られているような、そんな気さえして。それがいやで情報を集めるようになったのに、それさえも虚しく感じるようになった。 死にたい、と本気で願ったこともあったけれど、それは面倒になって止めた。死のうと行動を起こすことすら面倒だと考えるようになっていた。 だからこそ、俺は死んでもいいと思いながら生きているのだろう、きっとこれからも。 多分これからもそのつまらない日常は俺の中で刻まれていくのだろうと思っていた。そんな中学時代を送ってきた。 そして、高校になって、彼に出会った。 最初は俺が今まで出会ってきた人間とは変わらないものだと思っていた。けれども違った。あいつは化け物で、怪物で、まさに人間の範疇から外れていた。面白い。初めて興味を持った個体だった。人間というものをひとくくりにして考えていたからこそ、その規定から外れたモノに興味を持った。 操ろうとした。自分の駒にしてしまおうとした。今までのように、これからのように。 けれども俺の用意した鎖など糸のように簡単に千切り取った彼は、そして俺に襲いかかってきた。飼い主の言うことを聞かない猛獣など手に負えるはずがない。いくら俺が鞭を振ったところで痛くも痒くもないのだから。本当に忌々しい存在で。 普段だったら自分の中の予想以外の行動を起こす人間は、それはそれで面白いと考えることもできたのに、なぜか彼が自分の掌の上から飛び出していくたびに俺は苛立った。 気がつけば、日常の退屈など考えなくなっていた。 忌々しいと考えていた彼は、そして俺の暇つぶしどころか忙しい日常と非日常をもたらしていた。 もしかしたら。 もしかしたら、彼のお陰で今自分は生きているのだろう、なんていう可能性が0,001%くらいはあるかもしれない、なんて思ったりなんかしたりしたのはただの気の迷いに他ならないのだけれど。 小説top |