ほろ苦い






妹達からお菓子をもらった。男性向けの苦いポッキー。安かったらしい。

「一か月遅れのバレンタインだよ! イザ兄! ってことでホワイトデーも一か月遅れでいいから何かちょうだいねっ!」
「……望」

何が一ヶ月遅れのバレンタインだと内心思わなくもなかったが、けれども強引に押し付けられたものを無碍に断るのも癪に思えて、仕方なくその長方形の箱を受け取った。
袋を開ければ見事にバキボキに折れた細長いチョコレート菓子の束。ため息が出る。別にチョコレートなんて好きではないのに。
気まぐれにその中の一本をつまめば見事にブラックチョコレートがコーティングされた所だけで、それならば下にはみ出したような生地が丸見えの部分などいらないではないかと思わずにはいられなかった。
食べ終わると溶けて指にチョコレートがこびり付く。めんどうくさいなぁと思いながら指を舐めればそれは思ったより苦い味がした。それはキスをするたびに彼の口から舐めとる苦さよりも甘ったるいはずなのに、けれどもなぜかそんな事を思い出した。

きっとこの関係は折れてしまったこのポッキーのように二度と修復なんて出来ないのだろう、なんてセンチメンタルな事を考えたのは、きっと久しぶりにチョコレートを食べたからに違いない。












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