そうやってきみが



こいつと、取り立ての仕事を始めてから一年が過ぎた。
それまで何事もなかったわけではない。たいてい、二三件の取り立てに行けば、そのうちのどれかで必ずと言っていいほど静雄がブチ切れて、人が飛んでいくか埋まるかのめり込むかのどれかの結果が待っていた。運が悪ければ、それこそすべての取り立ての現場で。
けれどもその中で稀ではあったが、静雄が暴れなくてもいいような、そんな日があったことも事実で。そんな日は、はにかんだ顔をして「お疲れ様っす」なんていう後輩に、ロシア寿司に誘うことも少なくなく。なんといっても、一年もこうやって顔を合わせているのだから。いい所も悪い所も、両方を見てきた。

その中で、一番思ったこと。


「おっす、お疲れ。静雄」
「トムさんこそ、お疲れっす」

自分よりも頭一つ分高いその頭を、かき回すように撫でれば、静雄が微かに笑みを返した。薄い青色の向こうの瞳が細められて、くすぐったそうだ。

「よし、今日は豪華にロシア寿司でも行くか」
「えっ、いいんすか」
「おう。俺のおごりだ」

静雄は気が付いているのだろうか。今日は、お前が俺ん所で働き始めて一年たったことに。
警察署の前で雨に濡れたお前を見て、思わず一緒に仕事をしないかと誘ってから。
もう。

――来年も、お前と一緒に働けたらいい。
なんて、口には出せないけれども。

「ありがとうございます!」


はにかむでも、微笑むわけでもなく、そうやって満面の笑みを浮かべるお前と一緒で、俺はなんだかんだ楽しかったよ。










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