消えない爪痕



※事後



自然に目がさめれば、そこは見知らぬようでけれどもよく知っている天井だった。

「ああ……」

一人分だけの体温しか残らない大きすぎるベッドに横たわりながら、静雄の口からため息とも、呟きともとれない言葉が口の端からこぼれる。スプリングがギシリと鳴った。その音に、もう違和感を持たなくなっている自分の脳を呪いたい気分だった。
窓から差し込む陽光がまぶしくて眼を覆うように重たい腕を持ち上げれば、手頸の所についた紫色の自分の歯形が否応なく目について、思わず顔に血が上ぼる。紛れもないそれは、昨夜の情事の後なのだということを静雄に示していた。

声が漏れないように腕にかみつき始めたのはいつからだったのか、それさえももう覚えてはいない。











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