スプーンと角砂糖 |
※幽→静 「好きだよ、兄貴」 事あるごとに、俺は兄貴に言う。たとえば、一緒に家で映画を見ているときに。レストランでご飯を食べているときに。町でたまたま出会った時に。 無表情で無感動に言われる言葉は、もはやテープレコーダーを再生するのと変わりがないように自分で思うけれども、でも、兄貴はそう言うたびに、くしゃりと笑って俺の頭にそっと触れる。 「ありがとうな、幽」 甘ったるい囁きは、兄貴のもとへは届かない。俺の口から飛び出すとすぐに歪んでしまう言葉。けれども、俺は告白することを止めようとは思わなかった。 例え兄貴が俺のことをどういう風に思っていたとしても、兄貴が俺に触れ続ける限り。 ――それは、緩やかな拘束なのだと、兄は知らない。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ お題お借りしました。 joy様 小説top |