愛に怯える子供 |
※六静 「静雄。俺はどこでもあんたのことだけを考えている。好きだ、あんたのことが。本当に心の底から、どうしようもなく好きなんだよ」 …………やめろ。 「一日中ずっと静雄のことを想っている。たとえ嫌われても、俺は静雄のことを一生想い続ける。分かったんだ。今日、はっきりと分かったんだ」 ……やめろ。 やめろ、やめろ、やめてくれ。 「俺は、お前のことをあい、」 「やめろ!」 千影の声を遮るように、俺は叫んだ。もう、千影の言葉を聞くことができなかった。 俺は、千影の愛情を受け取るにふさわしい人間ではない。愛され方を分からない俺には、きっと誰を愛する方法も分からない。千影の想いに応えたくても、応え方が分からない。第一、俺は男で、千影も男で。その間の恋愛感情など不毛なものだ。 そして俺は、人々に恐れられる喧嘩人形なのだ。一度キレると止まれない、どうしようもない人間なんだ。好きならばどんなことでものり越えて行けるなんて言うのは、紙の上の恋愛だけであって現実は違う。千影は、俺なんかではなくもっと可愛い普通の女性と付き合って結婚して幸せになるべきなのだ。 だから、俺なんて諦めろ。諦めてしまえ。やめてしまえ。俺のことを嫌ってしまえ。 お前のその思いはただの勘違いか若気の至りのどちらかだ。だから。 頼むから。 俺なんて、忘れてくれ。 ――……俺に、お前の愛は、重すぎたんだ。 小説top |