弾丸は何も撃ちぬけない



※5(6)巻の写真ネタ




「あーあ、全く。どうしてシズちゃんの写真なんかが、ここにあるんだろうね」

デスクの上で頬杖をついて、ふてくされたように臨也が言った。

「仕方ないじゃない。あなたのくだらない思いつきのためでしょう」

優秀な臨也の部下は、淡々と書類整理をしながら上司の言葉に返事を返す。ま、そうなんだけどさぁ、とごねる臨也に呆れたのか、浪江はため息を一つ吐くと、部屋から出て行ってしまった。

「つれないなぁ」

長い髪を揺らせた後姿が、ドアの向こうに消える。それから、臨也は何かぼんやりと考え込んでいたが、デスクの引き出しを開けると、一枚の写真を取り出した。
平和島静雄が、凶悪にこちらを見ている写真だった。それは、臨也が命令して撮らせた写真で、これからある計画のために粟楠茜に渡される予定のものだ。

「君は、本当に写真うつりが悪いね」

そんな顔していたら、子供にも嫌われちゃうよ? と、臨也は写真の中の静雄に向かって話しかける。しかし、静雄はどんな言葉を言われても、ただこちらを睨みつけているだけだった。指で弾くように写真を撃てば、臨也の手から離れてひらひらとデスクの上に落ちていく。


「…………好きだよ」


小さく呟かれた臨也の言葉は、写真だけにしか聞こえない。
そして、その言葉にさえ何も表情を変えずに静雄は写真の中にいた。


不毛だと臨也は自分を笑った。










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