躑躅と髑髏 |
つつじが咲いている小道に静雄は一人で歩いている。あふれんばかりのつつじの香りが溜まっている道だ。 先は分からない。ただ、どうしても、戻ってはいけないのだという意識があった。恐怖でもない。哀愁でもない。何から逃げ出してきたのか静雄の記憶からはもう消えてしまっていた。しかし、目前に希望の気配はない。ただ、自分は前に進まねばならないのだ。そうして、このつつじの咲いた道の先に何があるのかも考えてはいけないのだ。 前にはひたすらに道が続いていた。その両側にあふれんばかりに濃い桃色の花弁を淫靡に開かせたつつじがある。静雄はただ歩くのみであった。 どれほどの時を歩いただろうか。足元で乾いた音がした。何かが割れる軽い音だった。静雄はそこで初めて足を止めて下を向いた。されこうべがこちらを向いていた。一歩後ずさればそこにも真白い骨がある。後ろを振り向けば、自分が歩いてきた道はどこまでも骨で埋め尽くされている。 小説top |