カペラに会いに行く



キンとした寒さの時の方が、星がよく見えるのだと静雄に教えたのは門田だった。放課後、屋上に避難しているときに門田は唐突に言ったのだ。「今日は、寒いから、きっと星がよく見える」うろこ雲を見上げる門田が少し嬉しそうに静雄には思えた。静雄は他人の心境に敏感だ。「門田は星が好きなのか」ひんやりとした風が二人に吹き付けた。「ああ、好きだ」「なんで好きなんだ?」「星は……そうだな、星はとても静かなんだ。静かで、そうして途方もない距離にいて、俺たちはこんな広いところで生きているんだってわかるから」また、ひゅうと風が吹いた。秋の風だった。まだ、冬には遠くとも、けれどこれからの寒さを予感させる風だった。静雄は途方もない距離というものを想像しようとした。けれど、それはあんまりに途方もなかったので分からなかった。けれど、広いところにただ一人でいる気分は、良くわかった。「なんだか、それは、淋しいだろうな」門田は静かに笑った。「そんなに淋しくなんかないさ」そんな昼の会話を静雄は思い出していた。夜はめっきり冷えて、晴れていて、そしてとても密やかだった。透明な夜空の向こうにチカチカと星が見える。あの一つ一つが、遠く、果てから届いている、光なのだ。少しだけ、途方もない距離というのに触れた気がした。門田もどこかで空を見上げているのだそうか。そんなことを想えば、確かに淋しくないなと、静雄は微笑んだ。そっと吐き出した息は白くぼやけていた。冬が近い。








小説top

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -