いま君の動脈が温かいということ |
人の体温が嫌いだ。 冷たい指先が嫌いだ。暖かな頬が嫌いだ。濡れた唇が嫌いだ。乾いた背中が嫌いだ。なぜならそれらはすべて相手が生きているから発露するもので、そうしてそれをまざまざと自分に訴えかけてくるからだ。相手は生きているんだと。大嫌いだ、そんなものは。たまに自分の熱にさえ嫌気がさして、この爪で血液をすべて掻き出してしまいたい衝動に駆られる時がある。生きているものなんて大嫌い。 恐ろしい。 自分が触れたことで、その体温が奪われていく幻想が張り付いて取れない。そんなこと、過去に一度もなかったはずなのに。経験すらしたことないその夢みたいなことに対して、自分が確かに現実に恐怖感を持っていた。 嫌いだと言えば、そうすれば触らないですむ理由になる。 優しく触れる。 指先がそっと絡まる。 柔らかに撫でる。 溶けていきそうだと、思う。あまりに熱い自分の体温で。焼けついてしまいそうになるほど。そうして溶けていって何もかも混ざり合ってしまうのが恋をするという事なのだろうか。 title by joy 小説top |