はるとり



鳥を飼いたい、と静雄は言った。ある春の日のことである。

鳥を、と彼の言の葉をつなぐようにして臨也はつぶやいた。肯定でも否定でもなく直前の言葉を繰り返すことばは、ただ会話を引き延ばすためだけにあった。そういう癖を自分が持っていることを彼はまだ気が付いていない。鳥を買いたいなんて突然言い出す静雄に戸惑い、そうして多くの疑問を持ってしまったがために、冷静になる時間が臨也には必要だったのだ。

そう、鳥だ。静雄は深くうなずいた。なにか確信めいたものがあるのだろうか。何の鳥だと臨也は尋ねた。何の鳥でもいい、鶏でも、文鳥でも、鶯でも、何の鳥でもいいのだ。静雄はまた、間髪を入れず答えた。きっぱりとした口調だった。それでいて歌う様でもあった。

確かにこんな暖かな日に、窓辺に籠に入れた鳥を出してやれたら良い声でなくだろうな、とふと、昔読んだ小説の一節を思い出しながら、臨也は答えた。それも良いかもしれないな。静雄は窓の方を向いていた。その首筋に目を向けながら、この男も鳥籠の鳥の様なものかもしれないと臨也は思い、そうして居心地が悪そうに身じろぎをした。だとしたら閉じ込めているのは自分だと、気が付いてしまったからだった。








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